中国水利部の嬌勇副部長、計画局の周学文局長、水利部政策法律司の李鷹司長、資源司の陳明忠司長等の水利部の高官が、2014年3月21日、国務院新聞弁公室の記者会見で、河川・湖における管理の強化、水生態文明の構築の状況を説明したうえで記者インタビューを応じた。
概要は下記の通りである。
改善は進むものの、依然として課題は多い
周学文氏によると、2013年末までに中国の農村部において4億人余の飲料水安全問題が解決されたが、まだ1億人余の飲料水に安全上の問題があるという。さらに、問題解決方案の一環として、現在、政府は水資源の効率的な利用に向け、地域間の用水権取引の導入を模索していると説明した。
また陳明忠司長の説明によると、近年中国全体の水質状況は改善に向かっているが、一部の地域および水域では深刻な水質汚染が続いており、水利部が監視する主要河川と湖のうち、水質基準値に達したのは47.4%に過ぎないことが明らかになった。
安全な飲料水源の確保を目指す
同記者会見で嬌勇副部長は、現在中国農村部での安全集中給水のカバー率は73%であり、農村部の23%はまだ溜め池などから飲料水が供給されていることを説明し、第十二次五ヶ年計画における農村飲料水に関する目標を達成した後でも、農村部の安全な飲料水の確保にはさらなる努力が必要であることを強調した。
同記者会見の内容について、北京公衆と環境研究センターの馬軍主任の分析によれば、中国の半分以上の水域は水質基準を満たしていない中、最も影響を受けているのは付近の河川や井戸を直接飲料水源とする農村部の住民であるという。この問題について、李克強首相が、全国人民代表大会第2回会議での政府活動報告の中で、2015年末までに農村部の飲料水問題を全面的に解決するという目標を掲げている。一方、馬軍氏は、農村部の飲料水の利用現状の複雑さからみれば、2年以内にこの問題を徹底的に解決することは難しく、特に持続可能な安全水源の確保は簡単ではないと指摘した。
水不足の解決に向けて、用水権取引の実施を画策
また、水資源の開発利用に関しては、中国政府が公表した「全国水資源総合計画」では、2030までに全国水資源の開発利用総量を7000億m3 以内に抑えるという目標が設定された。一方、急速な経済発展に伴い、水資源に対する需要が増えつつあり、水不足の問題の解決には、用水権取引は実行性がある解決策として注目されている。
現在、中国の寧夏、内モンゴルなどの地域で用水権取引制度が試行されている。資源配置における市場の役割を充分に果たせ、社会資本を農業水利にひきつけ、さらに農業用水権の価格を向上させる等、用水権取引の試行に大いに期待がかかっていると嬌勇副部長が同記者会見で説明した。ところが、水資源が比較的豊富で、しかも農業用水の割合が比較的低いというような地域で展開する必要があるかなど、全国での展開について議論が続いている。さらに、用水権取引を実施するには、初期用水権の配分について地域間の公平性・妥当性を保障する等さまざまな課題が存在していると馬軍氏に指摘した。