フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は2015年4月29日、雑用水の一般家庭における再利用の潜在的な健康リスクに関する報告書を公表した。
浴室、洗面台、洗濯機、台所の流し等で使用した後で浄化処理して人の飲用以外の目的で再利用する水を一般に雑用水と総称するが、現在、これらの水を家庭用に供することはフランスでは認められていない。しかし近年、オーストラリア、米国、イスラエル、日本で水資源節約の観点から雑用水の家庭における再利用が検討されていることなどから、フランス保健総局は2011年、雑用水の家庭における再利用を想定したリスク評価をANSESに付託した。
ANSESは今般の報告書において、現時点ではデータが不足しているので雑用水に含まれる汚染物質や微生物の危険性を厳密かつ網羅的に評価することは難しいとした上で、家庭における再利用の条件として、恒常的あるいは頻繁に水不足に悩まされている地域における次のような用途に限定すべきであると勧告している。
- 水洗トイレの水槽
- 緑地帯(菜園等を除く)における散水
- 高圧洗浄機を用いず、大気浮遊粒子状物質(エアロゾル)を発生させないことを条件に、外表面の洗浄(その場合、雑用水に洗浄剤を添加しないことが望ましい)
ANSESは、雑用水を家庭で利用することを想定した場合、飲用等に供される通常の生活用水の系統と雑用水の系統を分離するシステムが必要であると指摘している。ANSESはまた、同じ建物の中に飲用水の系統と雑用水の系統が並存していることに伴うリスクを最小化するために、公衆(居住者、一時的ユーザー、職業ユーザー)に対して使用条件に関する十分な情報を提供し、使い分けに習熟させなければならないとしている。