英国ウォーター・パートナーシップ、「水と都市の将来ビジョン」報告書を発表

英国の自然環境研究会議(NERC)が2015年7月23日、報告書「水と都市の将来ビジョン」*1を称賛する声明を出した。本報告書は、英国の産学官提携の水事業団体であるUKウォーター・パートナーシップが作成し、英国政府科学局が出版した。環境科学に対する英国最大の資金提供団体であるNERCも協力した。

これら専門家らは、変化する環境のなかで水管理にかかわる諸問題(きれいな飲料水の供給、下水処理、洪水リスクの制御等)に、将来の都市がどのように対応できるかを検討した。その出発点として、次の5つの異なる2065年現在のビジョンを吟味した。

(1) ビジョン1:グリーンな食料や庭のある都市景観
建物の内と外で、より多くの食料の糧が成長している。その際、水に対する感度の高い都市の設計管理が重要な役割を果たしている。

(2) ビジョン2:洪水に強い都市
既存の都市ばかりでなく、支柱で浮く新たな都市区画も、海面上昇や豪雨、河川氾濫原の拡大に耐えられるよう設計されている。

(3) ビジョン3:スマートホームと都市ネットワーク
さまざま機器設備やネットワーク、データハブが、インターネットを通じて水の供給と需要を最適に管理できるよう相互に連動している。

(4) ビジョン4:都市と地下世界
効率的な排水、水、熱、冷却の各サービスを提供する複合システムを格納するため、都市直下の深地層が活用されている。

(5) ビジョン5:地域社会の習慣が変容した都市
水道会社が実施するプログラムによって、地域社会の水関連の習慣や取り組みが、より持続可能なレベルへと変容している。

次に、今後の研究で技術革新によって解決を図るべき8つの諸問題を指摘した。

(1) 生命、健康、レジャーのために必要な水量と水質の確保
都市の淡水を、21世紀都市への人口集中に応じて十分に確保できないかもしれない。

(2) エンドユーザーと都市居住者の行動と需要
水利用を効率化し、可能であれば全体的な需要を削減する必要がある。

(3) インフラ:地上
集中的なインフラと分散的なインフラのいずれが良いのかを判断する。

(4) インフラ:地下
地下に埋設したインフラが、どのように自然環境と相互作用するのかを把握する。

(5) 都市の地下水管理
都市の地下水の役割と持続可能な管理について認識する。

(6) リスクや異常事象への強靭さ
あらゆる種類の天災や人災に際して、都市が直面するリスクを理解する。

(7) 環境と生態系
将来の都市が、広範な環境に与えるインパクトを評価する

(8) 分野横断的な問題と全体的なシステムアプローチ
水管理に関わる多くの問題は1つの特定の側面だけに関わるものでないことを確認する。

*1 https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/439301/gs-15-27-future-visions-for-water-and-cities-thought-piece.pdf