米カリフォルニア州の干ばつがエネルギー・コストを上げる

カリフォルニア州は4年間続く干ばつに苦しんでいる。2015年4月には州全体にわたる大規模な節水、取締りの強化、水基盤プロジェクトの優先、新しい節水技術を支援する知事令B-29-15を発行した*1。そして今、州のリーダーたちは水の使用をさらに制限する前例のない決定を迫られている。様々な部門への干ばつの影響が議論されているが、この記事ではエネルギー部門に与える影響に関する議論を紹介する。

水力発電の減少

カリフォルニア州と西部の多くの州は、安価で通常は豊富なクリーンエネルギーとして水力発電に依存している。しかし、その電力供給は積雪量に左右され、干ばつによりその積雪量はこの500年間で最も少ない。水力発電量が減少すると、その不足分を天然ガスあるいは石炭に依存することになり、経済的にも環境的にも大きなコストを強いられる。

大気質の悪化と安全上の問題

化石燃料使用増加による大気汚染に加え、乾燥した気候と雨不足により多くの壊滅的な山火事が発生し、さらに大気を汚染している。そして、山火事は発電施設や配電設備に深刻な被害を与える可能性がある。もちろん温室効果ガス(GHG)も増える。

増加する地下水への依存

カリフォルニアの主要なエネルギー使用用途のひとつが、農業プロジェクトによる水の移動と穀物に灌漑するためのポンプの使用である。地上の水の供給が減少すれば地下水をくみ上げることになり、そのポンプを駆動するために電力消費が大幅に増える。それにより農産物生産コスト上昇、耕作放棄、供給不足、農産物価格の上昇へと連鎖する可能性がある。

再生水の利用の増加

上記の知事令により25%の都市部での飲料水の節水が求められ、強力な節水と水のリサイクリング・プログラムが導入された。このように飲料水が不足し、より高価になったため、多くが再生水やその他の技術的解決策に頼っている。再生水は飲料水以外の水としてますます使用されており、海水淡水化プラントも飲料水を増やすことに役立つかもしれない。しかし、これらの技術は大量のエネルギーを必要とする。また、これらの施設の環境アセスメントや建設と稼動には数年を要し、現在の水不足の特効薬とはいえない。

このように、水不足はエネルギーのコストとエネルギー部門からの発生するGHGやその他の排気を増加させる。GHGが増えると、カリフォルニア大気資源委員会(CARB)規則により課せられるキャップ・アンド・トレード・アローアンス(Cap-and-Trade Allowance)のために、公益事業者や発電事業者にさらにコストがかかる。

水不足による影響に取り組む州政府機関の活動

カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)は単独で、また、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)およびCARBとともに、このような問題に取り組み始めた。例えば8月28日に、州の機関を集めて、カリフォルニア州の干ばつ対策に取り組むためのワークショップを開いた。このワークショップはWater-Energy Nexus*2と呼ばれるCPUCの規則策定と連動して行なわれた。参加者は現在の干ばつの影響、対応活動のアップデートなどを話し合い、長期的展望、『Preparing for a Future Drought』を策定して閉会した。

*1 EWBJ54号に関連記事有り「米カリフォルニア州知事、大規模な節水と取り締まり強化のための地事令を発表

*2 http://www.cpuc.ca.gov/PUC/energy/Energy+Efficiency/Water-Energy+Nexus+Programs.htm