カリフォルニア州の深刻な水不足は良く知られているが、カナダ西部も深刻な水不足状態にある。その影響は米国北西部の州にも影響を及ぼしている。ワシントン州魚類・野生生物、水資源政策局(Department of Fish and Wildlife Water Resource Policy)の2015年干ばつ対策の調整官Teresa Scott氏によると、コロンビア川下流域にあるダムの流量は、2015年4月から9月の期間で平均およそ67%であると語った。カナダのアルバータ州環境庁によると、アスバスカ川(Athabasca River)が健全な生態系システムを維持するために必要な流水量は、夏のピーク時で毎秒およそ900m3であるというが、2015年8月初旬では、その量は毎秒557m3であった。
その結果、アルバータ州エネルギー監督庁(Alberta Energy Regulator:AER)が、複数の石油および天然ガス生産企業のアスバスカ川からの取水を制限するなど、エネルギー会社に取水制限を設けている。ブリティッシュコロンビア(以降BC)州の河川を流れる水量の低下が、カナダ西部のエネルギー生産への懸念を引き起こしているという。ブリティッシュコロンビア州政府は、積雪量の減少および高い気温が水不足の原因である可能性があると発表した。
カナダ西部の水不足による利用可能な水量の減少は、コロンビア川条約(Columbia River Treaty:CRT)により流水量を管理されている米国の州、特に、ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、およびモンタナ州にも影響を及ぼす可能性がある。氷河に関する研究によると、北米最大の水力発電が取水するコロンビア川流域の流量は、雪解け水の変化の影響を受けやすいという。CRTは、カナダのブリティッシュコロンビア州、米国のワシントン州およびオレゴン州へ流れる全長1249マイルの川に沿って、洪水リスク管理と水力発電のためのダムの建設と運営に関する条約である。CRTに基づき建設されたカナダ側にある3つのダムは、ブリティッシュコロンビア州の電力会社BC Hydroによって管理されている。
Royal Dutch Shell(RDS)のCameron Yost氏は、RDSの使用する水の80%がリサイクルされたものであるため、この取水制限は操業に影響を及ぼしていないと語った。2013年にRDSは、年平均流水量の7%が割り当てられているが、0.08%の使用に留めている。しかし、学術誌Nature Geoscienceの4月号にて掲載された調査報告によると、2100年までに、カナダ西部の氷河氷の最大90%が失われてしまう結果になる可能性があるという。ブリティッシュコロンビア大学の地理学科の研究員Simon Donner氏とDoris Leong氏は、学術誌Climate Changeに掲載された論文で、氷河から溶けた水が流れ込むアスバスカ川流域での水量の減少は、エネルギー産業が取水できる水量の減少を招く可能性があると、述べている。