2016年3月16日、スペイン・カタルーニャ州の高等裁判所が、バルセロナ都市圏政府AMBとAgbar社が締結していた官民合弁契約を、無効とする判決を下したと報道された。2012年に締結された契約は、Agbar社が100年以上前から提供している、バルセロナ地区の290万人の住民をカバーする23の市町村の飲料水を供給するサービスを継続するために、Agbar社70%、金融Criteria Caixa社15%、AMB15%の合弁会社を設立することを合意するものである。この2012年に交わされた合意について、AMBが公開入札を行わずに合弁契約をAgbarと締結した正当な理由に欠けるというのが、今回の判決の理由となっている。また、Agbar社は、1953年に飲料水供給サービスのコンセッションを取得しているが、1982年にAMBが設立されてからはAMBとの正式な契約はなく、暗黙のコンセッションとなっていた点も、高等裁判所から指摘されている。
高等裁判所は、AMBが公開入札を実施しないでAgbarと契約したのは、政府機関調達の原則を尊重していないというものであり、長期間Agbarが専属的にサービスを提供していた点や、技術面、経済的な面でAgbarと契約したというのは、正当な理由付けとなっていないと判断した。高等裁判所の判決は、他社のサービスを考慮していないというAcciona社、Aqualia社及び、Aguas de Valencia社の訴えを受けたものとなっている。
一方判決を受けたAgbar社は、最高裁への上告の余地が残されており、また高等裁判所長官が、2012年に締結された契約書自体の法的ステータスには誤りがないという見解を出しているため、飲料水供給サービスは継続すると発表している。Agbarが現在提供しているバルセロナ地区の飲料水提供サービスは、35億ユーロの収入を出しており、35年契約となっている。
なお同裁判所は、2015年6月には、Acciona社およびブラジルのBTG Pactual社を中心とするコンソーシアムに与えられた、バルセロナ市近郊のATLL上水サービス契約落札を、入札プロセスに不明瞭な点があったとして無効とする判決も下しており、収益性の高い水サービスを巡る、水インフラ大手の「水戦争」と評されている。