欧州委員会、地中海沿岸諸国の水不足解消に向けた研究事業PRIMA へのEUの参加を提案

欧州委員会は2016年10月18日、気候変動の影響が強く出ている地中海沿岸で水と食料の持続可能な管理を促進するための研究事業PRIMA(Partnership for Research and Innovation in the Mediterranean Area)をEUが地中海沿岸諸国と共に実施することを提案する決定(Decision)案をまとめ、EU理事会と欧州議会に送った(下記URL)。総事業費は4億ユーロで、気候変動に起因する水不足を解消すべく、沿岸諸国間でシェア可能な対策の研究に重点を置くという。
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=COM:2016:0662:FIN

統合的水資源管理を促進する国際ネットワークGWP(Global Water Partnership)によると、地中海付近では、持続可能な水資源へのアクセスが年間1000 m3を下回る“水貧困市民”が1億8000万人にのぼり、干ばつとそれに伴う健康や食料生産への影響が特に問題になっているという。欧州委員会も、水不足のせいで農作物の生産量が不安定化し、健康に影響したり、社会不安や移民の増加を招いていると指摘している。

こうした窮状を背景に、PRIMAは国連の持続可能な開発目標の6(すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する)および2(飢餓を無くし、食料安全保障と栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)に則して、この地域における持続可能な水管理と食料生産の強化を図るものである。これらの目標の達成度は、資源強度や温室効果ガス排出量、水生産性などの指標に基づき評価される。事業期間は2018~2028年で、2022年と2029年に進捗評価が予定されている。

これまでにフランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、キプロス、チェコ、ルクセンブルク、マルタ、チュニジア、イスラエルが、この事業計画に調印しており、エジプト、レバノン、モロッコが調印に向けて協議中であるという。参加国は既に本事業に2億ユーロの拠出を公約しているが、これに加えてEUの研究実証事業支援プログラムHorizon 2020から2億ユーロを出すことを欧州委員会は提案している。

決定案は「PRIMAの全体目標は、地中海付近での水供給・食料生産体制の気候耐性、効率、費用効果、持続可能性を高め、より根本的なところから栄養・健康・福祉・移民問題の解消に貢献するため、十分に実証・検証された革新的な対策を開発することである」としている。この法案は既にEU理事会(とその下部組織)では2016年10月19日と26日に協議され、欧州議会では10月27日に所轄委員会を産業委員会(ITRE)とすることが決められた。審議状況は下記URLから閲覧可能。
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/HIS/?uri=COM:2016:662:FIN