世界の水ストレスに米主導で対処すべき――米の官民共同の報告書

世界的に不足している水をめぐるさまざまな課題に対処すべく、アメリカはその専門的知見、リソース、それに大きな影響力を駆使して全地球規模の戦略を立てなければならない――2016年8月24日にアメリカの官民共同の調査プロジェクトが公表した報告書はこう述べている。この報告書は、安定した水供給を全世界で確保するための「グランド戦略」においてアメリカがリーダーシップをとらなければならないことの理由づけをおこなっている。報告書は、政府機関や民間企業などが参画しているアメリカ水パートナーシップ(USWP)という官民の連合組織と、国際問題のシンクタンクAtlantic Councilとが共同で作成した。

この報告書がつくられることになったのは、2016年3月に首都ワシントンでひらかれたグローバル・ウォーター・セキュリティ・サミットにおいて、特に、水ストレスを地域の不安定要因として捉えた2012年の「世界の水の安全保障に関するインテリジェンス・コミュニティー評価」を引き合いに、アメリカが水問題を国の優先課題に格上げするよう求められたことに端を発する。

世界各地で大きな問題に

アメリカで次期政権がまもなく誕生するこの時期に、この世界的な大問題への取り組みかたを、市民グループ、民間企業、それに政府機関が一体となって考えるのは意味のあることだと、報告書の著者ら――Peter EngelkeとDavid Michel――は言う。ふたりは、アメリカが飲料水の供給と下水処理で培った専門的知見を活かし、世界の国ぐにが水問題の衝撃に耐えられるよう手助けするための枠組をつくる必要があると考えている。

「われわれは、世界のいたるところにあるほんとうに大きな問題と向き合っている。それは、深刻さにおいて程度の差はあるものの、水の問題、それに、世界の主要地域における社会的、政治的、地政学的安定と水との関係という問題だ」とEngelkeは言う。

また、もうひとりの著者であるMichelはこう述べている。「われわれが水資源を語るとき、同時にそれは、開発における水の利用、安全保障、輸送、それに農業を語ることでもある。つまりここではさまざまな部門間の調整が問題になり、そのため、すべてを包括する水戦略を打ち立てるべきだという議論をわれわれは展開している」

将来は10億人が水不足に直面

USWPによれば、2025年には世界の人口の3分の2近くが水ストレスの状態にさらされ、そのうち10億人が、経済発展ばかりか人間の健康にも脅威となるレベルの水不足に直面することになるという。USWPは、世界の水問題に取り組むために2012年に国務省によって創設された組織で、環境保護庁(EPA)、国家海洋大気局(NOAA)、Coca-Cola Co.、Bank of America、McWane Inc.、Procter & Gamble Co.などが会員として名を連ねている。

なお、Atlantic CouncilとUSWPが共同で作成した報告書、Toward Global Water Security: U.S. Strategy for Twenty-First Century Challenge(世界の水の安全保障に向けて:21世紀の難問題へのアメリカの戦略)は、以下のURLで読むことができる。
http://www.atlanticcouncil.org/images/publications/Global_Water_Security_web_0823.pdf