Ben-Gurion University of the Negev(BGU)、及びUniversity of Illinois at Urbana-Champaign(UIUC)の研究者は2017年4月19日、公共下水処理場からウィルスを除去する過程を大幅に改善する革新的な限外ろ過(UF)膜を開発したことを明らかにした。限外ろ過膜を活用した現行のろ過法は、水が消毒副生成物で汚染されうる塩素などの化学薬品を使用しないが、病原性ウィルスを十分に除去するためには多大なエネルギーが必要となる。しかし今回両大学の研究者が共同で開発した新技術は、多大なエネルギーを必要とせずとも、病原性ウィルスを除去できる新たな手法として学術誌「Water Research」に掲載され、注目を集めている[1]。
米国五大湖を始め世界各国の水域などの飲料水源では、公共下水処理場からアデノウィルスが十分に除去できておらず、同汚染物質が検知されており、公衆安全面での課題となっている。アデノウィルスは、風邪や咽頭痛、気管支炎、肺炎、下痢、伝染性結膜炎、高熱、膀胱炎、胃腸炎、神経疾患を含む様々な疾病を人間に引き起こす。また、ノロウィルスは、吐き気、嘔吐、下痢をもたらし、ウィルス性胃腸炎の典型的な発生原因であり、胃腸炎関連の二番目に多い死因でもある。
BGU内のZuckerberg Institute for Water Research脱塩・水処理部局(Department of Desalination and Water Treatment)のMoshe Herzberg教授を率いる研究チームは、市販の限外ろ過を特別なヒドロゲルで塗装し、両性イオンポリマーヒドロゲルの生成に成功した。ウィルスを膜に寄せ付けずはじき返す同ヒドロゲルには、正電荷と負電荷が含まれており、加工されたフィルターの表面に蓄積されたウィルスを弱体化させることで効率性が向上する。その結果、アデノウィルスやノロウィルスなどの水系感染症ウィルスの除去率が大幅に改善する。UIUC化学工学部(Department of Chemical Engineering)のNguyen教授は、「ウィルスをより包括的に除去するために、市販の膜を単にポリメリゼーションする手法は、飲用水として処理水を再利用する上で病原菌をろ過する将来有望な技術開発である」と述べた。
[1] Ruiqing Lu et al., 2017: Improvement of virus removal using ultrafiltration membranes modified with grafted zwitterionic polymer hydrogels, Water Research, DOI: 10.1016/j.watres.2017.03.023
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0043135417301963