英国環境庁によると、同国の代表的な水道会社であるテムズウォーター社(Thames Water)が2017年3月22日、テムズ川の一連の重大汚染事案により、アイルズベリー刑事法院から、罰金と諸経費として前例のない2036万1140ポンド(約28億5000万円)もの巨額の支払いを命じられた。同社の法令違反は業務上過失によるもので、野生生物の死や住民の苦悩を招いたという。
起訴事案は個別の6件であり、2012~14年にさまざまな場所で、広範囲にわたり繰り返し不可避の水質汚染をもたらした。アイルズベリー刑事法院では、これらを1件にまとめ審理を行った。本事案は、英国環境庁の20年の歴史にあって最大の淡水汚染事案である。裁判所は次の点について審理を行った。
- テムズウォーター社は、テムズ川とその支流に下水を、どのように繰り返し非合法に排出したのか。その結果、河川全長14kmにわたって水質汚染が目に見える状態となり、鳥類や魚類、無脊椎動物を死に追いやった。
- 同社は1日当たり数百万リットルにも及ぶ未処理の下水を数週間にわたって、なぜ処理工程に回さずそのまま河川に放出したのか。下水処理場に入ってくる下水量は、設計上の処理容量を十分に下回っていた。多くの事例では、処理に回った下水量は、施設に入ってきた下水量の半分にも満たなかった。
同社の下水処理場(オックスフォードシャー州、バッキンガムシャー州、バークシャー州)は、一般住民にとって大きな苦悩と混乱の原因となった。川沿いの居住者、農民、地元事業者、釣り人、レクリエーション利用者なども、みな影響を受けた。環境庁が調査した結果、テムズウォーター社経営陣の、次のような怠慢が明らかになった。
- 未処理あるいは処理不足の下水をそのまま河川に排出した。
- 自社社員が確認していたリスクを度外視した。
- 深刻な問題が生じたとき作動する数千の優先度の高い警報に適切に対応しなかった。
審理を担当したSheridan判事は、テムズウォーター社の今回の「恥ずべき行為」を叱責したうえで、水質汚染は「全体として予見可能であり、防止できた」と述べた。「テムズウォーター社の社史に刻まれる暗黒きわまる時代となった。同社は法を軽んじていることを身をもって示し、地域に住む人びとにひどい思いをさせた」と指摘した。