台湾行政院の頼清徳院長は、2017年11月7日に開催した記者会見上で、台湾が直面している産業用水における問題や改善策について説明した。上記問題には、増え続ける産業用水量、低い給水および水利用効率、水資源の不均一な分布、予備用水の質や量に関する問題が含まれる。行政院は、こうした問題について討議した後、水資源の開発、水使用量の削減、給水量の調整、予備用水という4つの改善策を打ち出した。
現在の水資源管理と今後の目標について、台湾行政院がまとめた資料は以下よりダウンロード可能である。
https://www.ey.gov.tw/DL.ashx?s=24C7D1CBADA3BDDD5D6C33331B272301962E400FEAEAD731D13D9C91F9AFB176B428DD8B679A66C8&u=%2fUpload%2fRelFile%2f19%2f755787%2ff28e6bce-5050-4e64-9003-e7bacc490f76.pdf
増え続ける産業用水量
「水資源の開発」、「水使用量の削減」という改善策により、ダム、再生水、節水、人工湖の給水能力の引き上げを図り、産業用水の安全かつ安定した供給を保証する。計画によると、台湾の給水量は2031年までに、1年当たり19億トン増加する見通しである。1日当たりに換算すると約520万トン増となる。
低い給水および水利用効率
「水使用量の削減」という改善策を講じる。同改善策には、以下の3つの重点事業が含まれる。
- 水道水の漏水率の改善および工業用水の循環利用。
漏水率削減計画の実施を継続し、2031年までに漏水率10%(現在は16%)という目標の達成を目指す。地域別の目標値は下図の通り。 - 農業用水の水利用効率向上
老朽化した用水路の整備やパイプ灌漑を強化するとともに、環境に配慮した農地利用に対する給付金政策や、灌漑管理、水管理維持労働者(中国語原文:掌水工)などの措置を強化する。 - 工業用水の循環利用。
水利用効率の向上を図り、工場内での回収率を現在の70%から80%にまで引き上げる。
図 台湾全土における現状の漏水率と2031年の目標値
(出典:台湾経済部、產業穩定供水策略[1])
水資源の不均一な分布
「給水量の調整」措置を講じ、各地域に調整支援用の給水主管を設置し、工業団地に給水配管を敷設する。例えば、北部地域の場合には、翡翠ダムにより新北市の不足分を補い、それにより節約が可能となる石門ダムの水については、今後、建設する「桃園支援新竹主管」により新竹市に給水される。新竹県・市に供給される水量は、1日当たり約20万トンに達する見込み。上記のプロジェクトが完了すれば、新竹市より北の地域では、安定した水の供給が可能になる。
予備用水の質や量に関する問題
効果的かつ安定した「予備用水」措置を講じることにより、渇水期の水不足リスクの低減を図る。台湾北部、南部、東部、離島に予備用水を設置し、水が不足する際、予備調整用水として使用する。
計画によると、2031年までに、台湾北部の桃竹地域における予備用水量は、1日当たり13万トン(1日当たりの供給量は207万トンで、1日当たりの需要量は194万トン)に達する見込みである。計画が実現すれば、科学工業団地、工業団地における水不足という問題のみならず、生活用水の需要に関する問題も解決できる。
苗栗県、台中市、彰化県など台湾中部における予備用水量に関しては、2031年までに1日当たり32万トン(1日当たりの供給量は254万トンで、1日当たりの需要量は222万トン)に達するため、上記地域の産業用水における需要を満たせる。台湾南部については、1日当たりの予備用水量は8万トン(1日当たりの供給量は341万トン、1日当たりの需要量は333万トン)に達する計画である。それにより、同地域の工業団地の需要に応えることができるため、各産業の投資や参入を促すことが可能になる。
経済部によると、政府は「先見的インフラ計画」など複数の事業を推進し、水資源の開発、水使用量の削減、給水量の調整、予備用水などの対策も推進している。こうした一連の施策により、今後の気候変動により生じうる水不足というリスクに対応し、産業用水の安定した供給を確実かつ優先的に保証していく。
[1] https://www.ey.gov.tw/DL.ashx?s=24C7D1CBADA3BDDD5D6C33331B272301962E400FEAEAD731D13D9C91F9AFB176B428DD8B679A66C8&u=%2fUpload%2fRelFile%2f19%2f755787%2ff28e6bce-5050-4e64-9003-e7bacc490f76.pdf