カナダのオンタリオ州バリー市は、最近の厳しい全リン排出規制に対応するため、下水処理施設のグレードアップの必要に迫られている。SUEZのWater Technologies & Solutions事業部門が2018年10月1日に発表したところによると、同社は公開コンペによって、このグレードアップ・プロジェクトへの膜バイオリアクター(MBR)システムのサプライヤーに選ばれた。これにより、SUEZはZeeWeed 500D MBR技術をバリー市に提供するほか、エンジニアリング・デザインのサポートとオンサイトの運転開始業務もおこない、下水処理プラントからの処理済み排出水が流れ込んでいるシムコー湖などの環境保全のための同市の取組を支援する。バリー市のJohn Thompson環境サービス部長はこう述べている。「われわれはSUEZの費用対効果性の高いMBRソリューションを既存のタンクに組み込む。こうすることによって、厳しい排出規制に対応できるばかりでなく、既存のインフラを使うことで設置費用の節約もできる。SUEZのMBRソリューションはまた、現在の設置面積のままで処理能力を最大日量1億8000万リットルまで増強することも可能にしてくれる。これによってわれわれは、将来の市の成長と水需要の増大に対処することができる」
プロジェクトの概要
バリー市の下水処理プラントの現在の処理能力は平均で日量7600万リットルである。このうち5500万リットルを新たに導入されるSUEZのMBRシステムが担い、残りを既設のシステムで処理する。ふたつのシステムからの排出水はブレンドされ、その結果、処理プラントからの排出水は厳格化された基準を満たすことになる。プロジェクト全体の予備設計は、現在、バリー市とそのコンサルタントのSTANTECがおこなっているところで、これにSUEZが加わることになった。設計チームは協力して、価値重視の設計と処理水の水質確保をめざして作業を進めている。機器類の納入は2021年に予定されており、プロジェクト全体の完工と運転開始は2022年ないし2023年になる見込みである。
SUEZのWater Technologies & Solutions事業部門でエンジニアード・システムを担当するKevin Cassidyグローバル・リーダーはこう述べている。「われわれのZeeWeed 500D MBRシステムはバリー市の下水のような、処理が難しい水のために特別に設計されており、傷つきやすい生態系の保護をより確実にする環境配慮型の施設に最適だ。SUEZは、20年以上にわたる膜設計の経験を活かして、処理水の流量を増やし、より高い透過率を達成し、エネルギー消費を減らし、膜の寿命を延ばすことを、より小さな設置面積のなかですべて実現するべくZeeWeed 500膜を最適化してきた。それによって、今回のプロジェクトのような既存のインフラへの組み込みが、選択肢としてきわめて現実的なものとなった」
バリー市下水処理施設が置かれている状況
バリー市下水処理施設は三次処理を導入しており、すべての処理済み下水はシムコー湖に排出される前に紫外線殺菌される。この処理施設は一般の下水のほか、商業廃水および産業廃水も受けいれており、それらをシムコー湖の水質基準を満たすレベルにまで処理している。この施設の処理プロセスからは、3つの有用なもの――処理された排出水、農作物用の肥料、および熱と電力としてのエネルギー――が得られる。最近、オンタリオ州法が改正されてシムコー湖への排出水のリン濃度の基準が下げられ、そのためバリー市は、新たな基準の遵守と将来の処理水量増加への備えのために、処理技術のグレードアップに投資することが必要になった。なお、オンタリオ州が発表しているシムコー湖へのリンの削減目標は以下の通りである。
図 シムコー湖へのリン流入削減目標
(出典:オンタリオ州[1])
[1] https://www.ontario.ca/page/lake-simcoe-phosphorus-reduction-strategy