金属有機構造体で淡水化用高性能膜を実現へ

逆浸透(RO)は、海水から淡水を得るのに最も効果的な技術のひとつである。浸透というプロセスは半透膜の両面間の浸透圧傾斜によって生じる自然現象であり、膜は不純物を通さずに水だけを透過させる。RO膜を使った水再生利用プロセスはきわめてエネルギー集約的で、エネルギー・コストの上昇と化石燃料の気候変動への影響を考えると、有利な方法とは必ずしもいえない。さらに、従来使われているRO膜は水の輸送速度が遅い。このため、研究者らは、グラフェンや二硫化モリブデン(MoS2)などの2次元(2D)ナノマテリアルで新たな淡水化用膜をつくる実験をはじめた。

他の膜よりもすぐれたMOF膜の濾過性能

上記のほかにも、もともとオングストローム単位の細孔をもつ多孔質の材料として金属有機構造体(MOFがある。しかし、すでにつくられて性質もわかっているMOFは2万種類以上もあり、それを考えると、効率的なRO膜をつくるのにどのMOFが最適かを選ぶのが大きな課題となる。

カーネギーメロン大学で機械工学、マシン・ラーニング、化学工学、および医用生体工学を研究するAmir Barati Farimani助教はこう言う。「われわれは分子動力学シミュレーションを使って、ナノ多孔性MOFの透水係数とイオン阻止率を、外部静水圧、横方向と垂直方向の水の拡散、細孔における水の密度と速度、MOFの金属元素の効果、およびMOF層の数の関数として求めた。そこでわかったのは、MOFが他の2D材料と比べて多くの水を透過させ、通したくないイオンをほぼ100%阻止できるということだ」

Farimani助教とそのチームは、研究成果をWater Desalination with Two-Dimensional Metal–Organic Framework Membranesという論文にまとめてNano Letters誌に発表した[1]。研究チームはMOF付近での水の密度と通過経路をさらに調べ、MOF膜の両側のポテンシャル井戸が他の材料のものより弱いことがあり、それによって、より低いエネルギーをあたえるだけで水分子がMOFの細孔を通過できることをつきとめた。

細孔の大きさと孔隙率の重要性

「われわれは、2D MOFを淡水化に使えるすばらしい材料として提案したばかりでなく、2D MOFがなぜ他の膜材料より性能がよいのかという問への答えを出したことでも、この分野の研究を一歩進めたといえる」とFarimani助教は言う。この研究は、これまで知られていなかったふたつのポイントを明らかにした。ひとつは2次元MOF――より具体的には導電性金属ヘキサアミノベンゼン(M-HAB――を淡水化に利用できる可能性、もうひとつは、淡水化にとっての材料固有の孔隙率の重要性である。

淡水化において膜材料の性能を決定する最も重要なふたつの要因は、イオンを阻止する能力と、大きな流量の水を透過させる能力である。前者は材料のナノ細孔の大きさで決まり、後者は材料の孔隙率で決まる。Farimani助教はこう言う。「この研究でわれわれが対象としたM-HAB MOFは、理想的な細孔サイズ(直径8オングストローム)と固有の高孔隙率を備えている。この膜材料を逆浸透に使えば、淡水を大幅に安いコストで得ることができるだろう」

抜群の透水率

研究チームのシミュレーションで、このMOFの性能がきわめて高く、ピーク透水率がグラフェン膜やMoS2膜よりもおよそ1桁高いことがわかった。さらに、このMOFの透水率は、市場に出ている膜(MFIタイプのゼオライト膜、海水用ポリマーRO膜、かん水用RO膜、ナノ濾過膜、および高フラックスRO膜)と比べて3桁ないし6桁も高いこともわかった。

今後の課題

最後に、Farimani助教はこう述べている。「このMOF RO膜のエネルギー消費量が従来の膜よりきわめて小さいことから、われわれの研究が他の研究者たちを刺激し、さまざまな種類のMOFを淡水化の分野で実験することに関心を向けてもらえることを願っている。しかし、MOFが淡水化やイオンまたはガスの分離に使えるきわめて魅力的な材料だとはいっても、わずかな層から成る大きなMOFをつくることが、MOF膜の大量生産にとって大きな課題として残されている」

[1] Zhonglin Cao, Vincent Liu and Amir Barati Farimani, Water Desalination with Two-Dimensional Metal–Organic Framework Membranes, Nano Letters
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.nanolett.9b03225

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