ベトナム首都ハノイでは深刻化する河川の水質汚染を受けて、下水の回収、処理に必要となる資金を捻出するため、市内の特定地区の住民・企業に対して下水料金を新たに徴収する計画が進んでいる。ハノイ市当局は2019年11月時点で、一般家庭が現在負担している水道料金の20%、企業では同30%に相当する下水料金を課すことを予定している。
ハノイ市当局は現在、下水料金の徴収に向けて、パブリックコメントを募集している。下水料金の適用は今年から開始され、2023年まで毎年5%ずつ増額される。下水料金は、ハノイ市に位置する合計27地区のうち12地区に課せられる見込みである。同市は既に、水道料金の10%に相当する額を環境保護料金として徴収しており、水道使用量1立方メートル当たり平均10,000ベトナムドン(約47円)が課せられている。ハノイ市では、下水システムの稼働や維持に毎年多額の費用がかかるものの、環境保護税だけでは必要とされる投資額のわずか20%しか賄えていない。仮に今回の計画が承認されれば、毎月の水道使用量が10立方メートル未満の一般家庭は、毎月11,000ベトナムドン(約52円)を下水料金として支払う。同料金はその後値上げされ、2023年までに22,000ベトナムドン(約104円)を超える見込みである。
ハノイでは1日当たりの下水排出量は約120万立方メートルに上り、このうち家庭用排水は90万立方メートルを占めている。Hanoi Sewage and Drainage Companyの統計によると、同市の下水量のうち処理されているのは全体のわずか22%に留まり、残りは河川や湖沼へ直接放出されている。これらの下水には、有機残渣、化学物質、重金属、微生物などが含まれており、水域汚染や下流域への悪影響、水質レベルの低下を招くとされている。世界銀行(World Bank)が今年6月に発表した報告書では、ベトナムにて現在発生している水問題の多くは、下水の回収や処理への投資が不足していることが原因であると指摘されている。さらに、水汚染や国際河川への過剰な依存を理由に、ベトナムのGDPが2035年までに年間6%低下すると、世界銀行は警告している。