チリのPwC社のサステナビリティ・気候変動チームは、水資源の問題を抱えているチリにおいて、水の管理がどのようにビジネスに影響を与えるかに関してまとめた報告書*1を発表した。
チリでは、2003年から2013年の降水量が1866年以来最低レベルに達し、チリの人権庁によれば、チリで発生した社会環境紛争の39%は、何らかの形で水に関係している。この為水は企業にとって最も貴重な資源といえ、企業においては、企業内の節水に努めるだけでなく、近隣住民と水資源を共有すべきであると、報告書では述べられている。また、ビジネスにおける最善の水管理は、他の産業や、とりわけステークホルダーと協力して行うべきであり、第一段階として、水がビジネスに与えるリスクとその管理がどこにあるかを特定することが必要であると指摘している。
Gloabl Water Intelligence社(GWI)によれば、2011年以降、企業が水の保全や管理、獲得の為に費やした費用は840億米ドルに達している。このため、水に関係するインパクトを適切に評価しないと、資金の確保が制限され、借り入れ金利や保険料が高くなるなど、財務リスクが発生することが、まず第一のリスクとなる。
その他操業上のリスクとしては、水不足や水質低下による生産コストの上昇が挙げられ、市場リスクとしては、消費者の環境に対する配慮の向上により、ウォーターフットプリントの小さな競合先に市場シェアをとられるリスクが挙げられている。またステークホルダー重視の観点からは、水の使用が近隣住民の需要を脅かすようになると、企業の評判が下がり、更に住民の圧力で規制が厳しくなって水道料金が上がるリスクも考えられる。このリスクを回避する為には、ステークホルダーとのコミュニケーションや、当局との関係強化が必要となる。
また水と電力の関係に関する分析では、降水量が十分あった場合は、電力コストは150米ドル/MWh(平均100米ドル/MWh)となるが、旱魃が続いた場合の電力コストは190米ドル/MWh(平均150米ドル/MWh)となるとされている。なお、チリでは水資源の73%が農牧業および林業、12%が工業、9%が鉱業、6%が公共衛生サービス用に使用されている(下図)。
図 チリにおける水資源利用の内訳
(出典:Preservando el agua mediante relaciones efectivas)
*1 Preservando el agua mediante relaciones efectivas
http://www.pwc.com/cl/es/sustentabilidad-en-los-negocios/assets/Estudio-agua-web.pdf