インドネシア・ジャカルタ、下水処理の普及に向けて68兆ルピアの投資を海外事業者に呼びかける――フランス、日本、インドなどの企業が関心を寄せる

ジャカルタ首都特別州下水処理地方自治体公社(PAL Jaya)は、計68兆ルピア(約5300億円)を必要とする下水処理プラント15箇所への投資を海外の事業者に勧めている。 PAL Jayaの代表取締役スベクティ氏によると、既にジャカルタ首都特別州における下水処理のフィージビリティ・スタディを行おうと興味を持った国が幾つかあるという。また、2016年7月24日、スベクティ氏は現地メディアに対し次のように話している。「昨日、我々はインドの事業者の代理に会った。その前にはフランス、そして日本も下水処理プラントへの投資に興味を持っている」

関係者らが海外事業者を投資、及びフィージビリティ・スタディの実施に勧誘したい理由のひとつは、その投資額が大きいためだ、とスベクティ氏は言う。 スベクティ氏によれば、ジャカルタ首都特別州には現在、15箇所の下水処理用地があるが、それらの用地の幾つかはスンテル、及びマルンダ地区のように、まだ最大限には活用されていない。スンテル地区のポイントは同地区が商業エリアであること、一方のマルンダ地区は港湾産業からの排水がその背景にある。「各用地における投資額は6兆ルピア(約462億円)になる。15箇所を合計すれば68兆ルピア(約5300億円)に達することになる」とスベクティ氏は説明する。

スベクティ氏がこれらの投資を海外事業者に勧めるのは、排水処理だけのためではない。それ以上に、同プロジェクトは投資家に対し水循環(water cycle)に関わる開発コンセプトという付加価値を勧めている。意図されているコンセプトとは、PAL Jayaが下水を処理し原水にすることである。その後、ジャカルタ首都特別州飲料水地方自治体公社(PAM Jaya)が原水を処理し、飲料水にして人々に提供する。「単に下水処理を行うのみであれば、恐らく興味を持つ事業者はいない。しかし、水循環がコンセプトであれば付加価値が生まれる。ジャカルタ首都特別州は現在、まだ原水の供給が不足しているのだからなおさらだ」とスベクティ氏は言う。

 

PAL JayaとPAM Jayaの合併に向けて

また、「今後、水循環のコンセプトを現実化するには、PAL JayaとPAM Jayaの間での合併プロセスが重要になる」とスベクティ氏は言う。スベクティ氏によれば、上述のジャカルタ首都特別州地方政府所有事業体である2社は、最終的に1社に合併する前に、既に様々な事項における準備を開始している。「我々は特に官僚関係について、既に社内的な整理を始めている。PAL JayaとPAM Jayaが合併する際、各官僚は身分の明確性を持っていなければならない」と氏は言う。

さらにスベクティ氏は「その他に重要な精査事項は事業計画についてである」と言う。問題は、どちらも水処理をしているものの、両社の事業コンセプトには業種上の相違があることだ。このように、今後合併すれば、稼動させていく水処理事業の構造をもっと統合的に整備することになる。つまり、水処理の最初から最後までを扱う部門があることになる。

「事業構造とは先ほどの水循環だ。我々は排水をする処理部分にフォーカスする。一方、ジャカルタ首都特別州飲料水地方自治体公社に由来するユニットは原水を浄水にする処理を行う。合併すれば当然、もっと効果的かつ効率的になる」と氏は説明する。

PAM Jaya常務取締役エルラン・ヒダヤット氏によると、合併にむけて関係者らはまだ法的事務を処理しているとのことである。ヒダヤット氏によると、同ジャカルタ首都特別州地方政府所有事業体2社の合併プロセスは、事前にジャカルタ首都特別州地方議会の承認を申請しなければならないのでかなり複雑であるという。「我々は既に合併のための法的な草案を作成し、ジャカルタ首都特別州地方議会に提出済みである。現在、我々は彼らからのスケジュールを持つのみだ」とヒダヤット氏は説明する。

なおPAL Jayaの設立は、1987年10月26日付「ジャカルタ首都特別州排水処理局設立に関する公共事業(PU)大臣決定第510/KPTS/1987号」に基づく排水処理局(BPAL)から始まった。PAL Jayaの誕生は、1991年9月26日付「PAL Jaya地方自治体公社に関する地方規則第10号」に基づいている。一方、ジャカルタ首都特別州の飲料水サービスは最初、都市公共事業局の傘下にあった都市飲料水水道局によって行われた。その後、1977年4月30日、「ジャカルタ首都特別州地方規則第3/1977号」に基づきPAM Jayaが認定され、 1977年11月2日、ジャカルタ首都特別州官報1977年第74号の中で公布された「内務大臣証明書第PEM/10/53/13350 号」によってPAM Jayaは合法化された。

EnviXコメント

インドネシアでは都市部でもまだ下水道の普及が進んでおらず、多くが浄化槽などを利用している。豪州国際開発庁(AusAID)が2013年に発表した報告書によると、下水道を利用できる人口は1%未満であり、人口の半数以上が浄化槽を利用し、戸外で排泄する割合も14%に達しているという(下図)。またジャカルタでは、浄化槽があるにも関わらず、その維持管理が行われておらず、未処理の下水が地下に浸透または排水路に浸出しているという報告*1もある。これらは都市部での状況なので、地方や農村部の場合は下水インフラの整備はさらに遅れているものと考えられる。こういった問題の原因のひとつとしては、やはり政府の資金不足が挙げられ、それを補うためにも民間からの資金がいま求められている。ただし、投じた資金を回収できるか否かというリスクは依然として残っている。

f-059023a
図 インドネシア都市部における下水処理の現状
(出典:East Asia Pacific Region Urban Sanitation Review:
Indonesia Country Studyよりエンヴィックス作成)

*1 http://www.lsweb.co.jp/micro-tunnelling/parts/tachiyomi/2015/1501/1501_04.pdf

タグ「, 」の記事:

2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催
2020年2月1日
ブラジル・リオデジャネイロの上下水会社CEDAEの飲料水の水質問題で、民営化プロセスが困難になる可能性あり
2020年2月1日
ラ米ではPPPによる上下水部門への民間の参加が必要だが、法整備などの面で課題あり
2020年1月15日
RCAP、農村地域を対象とした医薬品の摂取過剰の解決と水質改善を目的としたパイロットプログラムを実施
2020年1月9日
下水に含有する薬剤の効果的な除去方法の特定――活性炭とオゾン処理を導入