中国・海綿都市開発事業の現状

中国では、海綿都市開発事業は2012年から提唱されるようになり、2016年までにすでに2回にわたってモデル都市リストが公布された。これまでの海綿都市開発事業において、PPP方式が主なビジネスモデルとして採用されている。具体的な実施において、事業全体は個々のプロジェクトに分割されることが多いく、個々のプロジェクトのビジネスモデルとしてはBOT方式が最も多く、全体の59%を占めている。

中国・住建部は、2014に公布した「海綿都市建設技術指南――低影響開発雨水システム構築(試行)」において海綿都市の建設事業が都市水系、都市緑地と広場、建築と住宅地、都市道路などのインフラ整備内容を含むと規定した。具体的なプロジェクトとしては、生態環境対策、水環境対策(都市排水・浸水防止、黒臭水系対策、雨水収集、配管敷設、水処理等)、情報化管理プラットホーム、都市道路および各種配管網、棚戸区(バラック地域)と新旧住宅の建設改造などの内容が含まれている。このうち、水環境対策だけのプロジェクトが最も多く、47.2%を占めている(下図)。その次は生態環境対策、水環境対策、都市道路と各種配管網、棚戸区改造と新旧住宅の建設改造を含む総合プロジェクトで、約13.9%を占めている。

f-060011a
図 海綿都市プロジェクトの内訳
(出典:中国水網)

具体的なビジネスモデルに関して、主に環境サービスの政府調達という形で採用されているが、個々のプロジェクトに関してはBOT方式が最も多く、59%を占めている。例えば水環境対策事業は黒臭水系対策、雨水収集、汚水処理場などを含み、主にBOT方式が採用されている。生態環境対策事業は主にBOTまたはTOT方式が採用されている。都市道路と管網、棚戸区改造と新旧住宅の建設改造事業の多くはEPC またはEPC+O方式が活用されている。情報化管理プラットホームに関しては、TOT方式の活用が多く見られる。

リターン制度に関して、現段階では海綿都市PPP事業は使用者負担、政府負担およびVGF(Viability Gap Funding;利用料金収益だけで民間資本またはプロジェクト会社の合理的なリターンにならない場合に、政府が財政補助、投資、優遇借款及びその他の優遇政策で収益を穴埋めする資金措置)という3種類の支払メカニズムが存在している。うち、VGFの割合が最も多く63%で、使用者負担はわずか3%である(下図)。

f-060011b
図 海綿都市PPP事業において採用されている支払メカニズム
(出典:中国水網)

これまでの海綿都市開発事業をみれば、事業限界、評価方法、ビジネスモデル、リターン制度などにまだ不明確な点が多いため、海綿都市事業の参入に当たって、多くの企業は依然として慎重な姿勢を示している。