有機フッ素化合物による環境汚染、世界に4つのホットスポット――グリーンピースの報告書

国際環境NGOのグリーンピースは2016年11月15日、有機フッ素化合物(PFCs)による環境汚染の4つのホットスポットを特定した報告書を公表した。これらのホットスポットがある地域では、化学品メーカーがPFCsを生産しており、これが環境汚染を引き起こしてきたばかりでなく、今後も周辺住民におよぼす影響が懸念されている。

報告書が示す4つのホットスポット

グリーンピースの報告書、“PFC Pollution Hotspots: How these chemicals are entering our bodies*1”(PFC汚染のホットスポット:人体に摂り込まれているこれら化学物質)は、イタリアのヴェネト地域、オランダのドルトレヒト、中国の山東省、およびアメリカのミッド・オハイオ・バレーにおける化学プラントの長年にわたる長鎖PFCsの生産の結果、汚染の蓄積がどのような影響をおよぼしているかを明らかにしている。いくつかのケースでは、PFCsが地表水、飲料水、地下水、それに大気や粉塵のなかでも見つかるなど、汚染がかなりの程度にまで達していることがわかっている。また、第三者機関による調査データはすべて、汚染が環境から周辺コミュニティの住民にまでおよんでいることを示している。PFCsのなかには、いったん環境に放出されると食物連鎖に入り込むものもあり、その多くは分解にきわめて長い時間がかかるため、汚染がほぼ不可逆的に進行してしまう。

グリーンピース・イタリアが2016年11月15日に公表したビデオのなかで、イタリアのヴェネト州の汚染地域出身のVincenzo Cordiano博士はこう述べている。「医学的に見て、PFAAs(PFCs)に曝されているひとびと、特にPFC製造プラントの周辺地域に住むひとびとを安全とみなすことはできない」

長鎖ばかりでなく短鎖PFCsにも懸念

現在、PFCsの健康への悪影響について証拠として上がっているのは、その多くがペルフルオロオクタン酸(PFOAペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOSなどの長鎖PFCsに関するものである。この長鎖PFCsは、欧米では炭素数のより少ないPFCsへの置き換えがほとんど終わっているが、中国では、工場によってはPFOAを依然として使っている。だが、短鎖PFCsについてもこれを懸念する声が高まってきており、短鎖のものを含むすべてのPFCsを消費者向け製品の製造に使うことをやめるよう求める文書に、38ヵ国の200人以上の科学者がすでに署名している。長鎖PFCsが引き起こした大きな被害を繰り返さないために、有害なPFCsをすべて禁止することをグリーンピースは要求している。

グリーンピースの「アウトドア・キャンペーン」

グリーンピースはアウトドア用品業界に対し、リーダーシップを発揮して2020年までに製品からすべてのPFCsをなくすよう求める「アウトドア・キャンペーン」を、世界中のアウトドア愛好家らとともに展開している。アウトドア用品のメーカーのなかには、すでに製品からPFCsをなくす取組をはじめているところもある。しかし、多くのメーカーは靴、ジャケット、寝袋などの防水加工を、依然として短鎖PFCsに大きく依存した方法でおこなっている。

グリーンピースのDetox Outdoorプロジェクトを率いるMirjam Koppはこう述べている。「世界中で、PFCsによる汚染は生産拠点の近くに住むひとびとに影響を及ぼしている。アウトドア用品産業は、PFCsに依存している多くの業界のひとつだ。われわれは、アウトドア用品メーカーが責任をもってPFC汚染の鎖を断ち切る必要があると確信している。そのために、われわれはアウトドア用品メーカーらに、このキャンペーンの呼びかけに応えるよう求めている」

*1 http://www.greenpeace.org/international/Global/international/publications/detox/2016/PFC-Pollution-Hotspots.pdf