環境保護団体Greenpeace East Asiaは2017年6月1日、報告書「十二五期間での各省における地表水環境質改善状況の評価」を発表した[1]。中国における水質改善目標の達成状況を検証した結果、約半数に当たる14省が2011年から2015年の間に遵守すべき目標値を達成できなかったと同報告書では結論づけられている(下図を参照。紫色が目標未達成の地域)。特に上海や天津では河川等の地表水の水質レベルが著しく悪化しており、水質レベルの改善に向けた早急な対策が地方自治体へ求められている。
図 各省(直轄市、自治区)における「十二五」環境保護計画地表水環境質改善目標の達成状況
(出典:Greenpeace East Asia、十二五期間での各省における地表水環境質改善状況の評価)
Greenpeace East Asiaは、2011年から2015年までの5年間にわたり、31カ所に及ぶ一級行政区[2]の環境保護局から145件に上る地表水の水質データを収集、検証した。その結果、第12次五か年計画が施行された2011年から2015年までのうち、最初の二年間は全国レベルで水質が改善したものの、2013年以降は横ばいであった。また、2015年時点で、中国8カ所の省を流れる主要河川のうち約半数の河川は、住民が水に触れることが不適切な水質レベル(レベル4以下)にあった。特に、上海を流れる主要河川のうち水質レベルが4以下の河川は全体の85.3%、天津では同95.1%に達している。また、農業や産業用途としての活用も不適切とされる水質レベル5以下にある地表水の割合は、北京が全体の39.9%、天津が同65.9%を占めている。
Greenpeace East Asiaに所属する活動家Deng Tingting氏は、「中国における現在の水質汚染は、環境破壊というレベルではなく、国民の健康に脅威となる水質である。近年、中央政府(環境保護部)は、国内の水質汚染問題を深刻に捉えている。しかし、地表水の水質を大幅に改善するためには、省政府による地方レベルでの取り組みが必須である」と指摘している。
五か年計画では、水質改善目標を5年毎に策定することが省政府に義務付けられている。2015年には「水汚染防止行動計画(水十条)」が国務院により発表[3]され、省政府が水質目標を遵守する責務を負うことが明記された。Greenpeace East Asiaは、水質改善目標を達成することを全省政府へ奨励しており、特に水質汚染レベルが極めて高い上海と天津では早急な対策が必要であるとしている。また、内モンゴル、四川省、山西省などでも、地表水の水質が悪化しつつあり、これを阻止するため何かしらの対策が必要であると指摘している。一方、江蘇省や安徽省などの省では、第12次五か年計画に基づき水質レベルが大幅に改善した。これらの省では、化学肥料などの重工業からの脱却が進みつつあるほか、廃水処理施設が改善されたことが、水質改善につながった。
図 2011-2015年での中国各省(直轄市、自治区)における地表水環境質の変化
(出典:Greenpeace East Asia、十二五期間での各省における地表水環境質改善状況の評価)
[1] 報告書の全文は以下よりダウンロード可能。
https://secured-static.greenpeace.org/eastasia/Global/eastasia/publications/reports/toxics/2017/waterpollutionreport.pdf
[2] 一級行政区(Province-level)には、23省、5自治区、4直轄市、2特別行政区が含まれる。
[3] EWBJ54号に関連記事あり「中国国務院、水汚染防止行動計画(水十条)を発表――水質汚染改善の中長期的目標やそのための措置について盛り込む」