ドイツ、医薬品等残留物の浄水処理に欧州全体で1100億ユーロ超のコストを予想

ドイツ連邦エネルギー水道事業組合(BDEW)[1]が2017年9月26日、医薬品、農薬、殺生物性製品の残留物を除去できるように下水処理場を改良するには、欧州全体で莫大な費用がかかる、と発表した。これら残留物が下水に到達するのを防止するほうが安上がりという。BDEWが発表した資料は以下よりダウンロード可能。
https://www.bdew.de/internet.nsf/id/2F779622442A71B7C12581A700387284/$file/Praesentation_Gutachten_BDEW_4_Reinigungsstufe.pdf

BDEWは、EU加盟28カ国とノルウェー、スイスを対象に、医薬品、農薬、殺生物性製品の残留物を下水から除去するのに必要な、いわゆる4次浄水処理工程を大規模下水処理場に導入するための費用に関する調査研究を、IWWライン・ヴェストファーレン水質コンサルティング開発研究所に委託し実施した。調査結果は次のとおりである。

  • 第4次浄水処理工程を大規模な浄水場すべてに追加設置する場合、施設の供用期間全体(30年以上)で、ドイツだけで370億ユーロ(約49000億円)以上の費用が必要になる。
  • 欧州全体でそれをやると、同1100億ユーロ(約146000億円)超もかかる。

欧州の標準的な浄水処理工程は次のとおりである。

1次処理 機械的処理:吸着、フィルタろ過、ストリッピングで固形浮遊物の2~3割を除去
2次処理 生物学的処理:微生物による有機物分解法等
3次処理 非生物学的・化学的処理:酸化、沈殿反応によるリン除去等
4次処理 オゾン処理法、粉末活性炭処理法(運転コスト高く、浄水場に整備できていない)

この調査結果に、BDEWのMartin Weyand事務局長は次のようにコメントした。

  • 追加の浄水処理には莫大な費用がかかることがわかった。市民にのしかかるこの追加負担は、下水処理料金の引き上げか、そうでなければ公の補助金によって賄わなければならない。それゆえ今こそ、包括的な総合戦略を練るべきときである。とくに、残留物の下水流入を防止する必要がある。化学物質がそもそも下水道に達しなければ、お金とエネルギーをかけて下水から除去する必要もなくなる。
  • 必要なことは、あらゆる分野で生態系に適した戦略を講じることである。化学物質を許可し、利用し、また生分解性製品によって代替する場合の要求条件を厳しくしたり、化学物質の回収システムや焼却を通じた透明な処分を推進することが不可欠である。
  • 発生者負担の原則を徹底して貫かなければ、ドイツの環境コストは数十億ユーロに跳ね上がってしまう。まだ方向転換は可能である。近視眼的な弥縫策をやめ、発生者負担の原則に基づく持続的な予防戦略に転換することが重要である。ドイツではとくに、新しい医薬品戦略が必要である。これら残留物の流入防止こそ、河川流域の最良の保全策にほかならない。

[1] ドイツのエネルギー事業者と上下水道事業者の代表的な同業者団体