インドネシア、チタルム川流域での汚染行為の実態を調査―-31の工場で違反を発見

インドネシアの西ジャワ州を流れるチタルム川は、世界でも最も汚染された河川のひとつとして取り沙汰されるが、今回、政府やボランティアなどの合同チームによって汚染行為に関する調査が実施された。本調査は2018年1月17日から23日まで行われたもので、調査チームは西ジャワ州バンドン軍管区司令部、環境局、環境活動家、ボランティアによって構成された。調査の結果、チタルム川流域へ様々な廃液を流す工場が数十あることが発見された。「調査活動では、31の工場がチタルム川の本流および支流で廃棄物を捨てていることを発見した。大半は22時以降に行われていた」と、西ジャワ州バンドン軍管区司令部大佐Arh Desi Ariyanto氏は説明する。また、調査チームが見つけた廃棄行為は、証拠としてビデオと写真で収められ、西部ジャワ警察および環境林業省・法令執行総局(Gakkum)のトップへ報告済みであるという。不法な廃棄を行っている工場のなかには、バンドン県全区域で最も大きいものもあった。このほかにも当局は、チタルム川流域の数千の工場から抜き打ちでの調査も行っているという。「我々は証拠を見つけたばかりで、サンプル試験までは至っていない。しかし、すでにある証拠は西部ジャワ警察および環境林業省Gakkum のトップへ報告済みだ」とDesi氏は言う。

今回の調査で発見されたチタルム川へ廃棄行為をおこなっていた企業は次の通りである。PT Duamatex、PT Marstex、PT Mahameru、PT Atritek、PT Ceres、PT Alfasarana、PT PJA、PT Sapilindo Permata、PT SUM、PT Anggana Kurnia Putra、PT Kertas Trimitra Mandiri、PT Kahatex Grup、PT Kwalram、PT Sunson、PT Pulau Mas 、PT BCP、PT Naga Mas、PT WIS、PT Dulang Mas、CV Purnama Tirtatex、PT Guna Jaya Sentosa、PT Tawekal Jaya、PT PMT I、PT UGW、PT Prapanca、PT Pulo Mas、PT Alpito、PT Waltex Katapang、PT Muara Ciwideuy Washing、PT Titone、PT Jaya Mandiri Plastik

EnviXコメント

チタルム川の汚染は以前からも問題になっているが、外務省が2014年に発表した報告書[1]によると、この原因としては繊維工場からの廃水や家庭からの生活廃水といった直接的な影響に加えて、上流での森林破壊といった間接的な要因が挙げられている。特に最大の汚染源となっているのが、最初に示した繊維工場からの廃水であり、地方政府(西ジャワ州・バンドン県)が2009年に実施した調査によると、チタラム川流域に位置する企業694社のうち大企業が300社あり、そのなかでも排水量が多い繊維企業は123社もある。より細かな地区別で言えば、Majalaya 地区とDayeuhkolot 地区での排水量が顕著であり、これらの地区での環境負荷が高くなっている。例えばMajalaya 地区での汚染状況としては次の通りである(2012年のデータ。水質等級(II)とは「農業や家畜の飼育、魚の養殖、水を必要とする娯楽及び それに準ずる水質を必要とする他の目的に使用することが可能」な基準に相当する)。

6月 7月 8月 9月 10月 水質等級(II)
BOD 工業排水流入前 5.96 11.9 3.34 11.4 14.5 3
工業排水流入後 4.99 161 41.1 113 184
COD 工業排水流入前 18.4 22.6 29.9 30.7 45.5 25
工業排水流入後 202 307 221 346 415

このようなチタラム川の汚染の対策については日本政府も支援を表明しており、最近では2018年1月に日本の環境大臣政務官がインドネシアを訪問し、ジョコ大統領やシティ環境林業大臣と意見交換し、この問題解決に向けた人材育成や技術支援などで合意した。

いままでは排水基準があったものの順守されてこなかったために、このような事態を招いたわけだが、今後はより厳格な規制の施行と、それにともなう廃水処理技術へのニーズの拡大が見込まれる。特に、繊維産業ということであれば染色排水対策がひとつの大きな課題であるため、それを解決する手段が求められる。


図 ゴミが浮かぶチタルム川とそこで遊ぶ子供たち[2]

[1] 外務省、インドネシア共和国自動再生式活性炭排水処理装置を用いた産業排水処理推進事業の案件化調査
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/kanmin/chusho_h25/pdfs/3a30-1.pdf

[2] http://www.mongabay.co.id/2018/01/31/citarum-sebagai-sebagai-sumber-air-potensial-bisakah-diandalkan/