欧州委員会、医薬品による環境リスクについて報告書

欧州委員会は2019年3月11日、医薬品の排出が環境におよぼすさまざまな悪影響に対処するための一連の行動をまとめた報告書を採択した。European Union Strategic Approach to Pharmaceuticals in the Environment[1](環境中医薬品の問題へのEUの戦略的アプローチ)と題するこの報告書は、医薬品のライフサイクルのあらゆる段階で改善の余地のある6つの行動分野を示している。報告書が取組の対象としているのは、人の医薬品と動物用医薬品である。6つの行動分野は、医薬品の設計と製造から使用後の処分と廃棄物管理にいたるまで、ライフサイクルのあらゆる段階を、「循環経済における持続可能な製品」と題するスタッフ・ワーキング文書の趣旨に沿ったかたちでカバーしており、具体的には、意識の向上と節度ある使用の推進、教育訓練とリスク評価の改善、モニタリング・データの収集、「グリーン設計」への動機づけ、製造工程からの排出の削減、廃棄物の減量化と廃水処理の改善といった行動を網羅している。

薬剤耐性への取組が特に重要

環境中に廃棄された医薬品は、魚をはじめとする野生生物にリスクをもたらすことがわかっている。たとえば、生殖能力に悪影響をあたえたり、行動に変化をもたらして生存を危うくしたり、あるいは直接的な中毒作用をもっていたりする。さらに、医薬品の処分を誤ると、薬剤耐性という重大な問題を引き起こすおそれもある。こうした認識が深まるにつれて、この問題についての研究が進むとともに、環境への排出、とりわけ水への排出、それに土壌への排出を減らすための行動が求められ、提案されるようになってきた。

今回の報告書では、優良事例の共有化、国際レベルでの協力、およびリスクのより深い理解が強調されている。このことは、世界レベルで深刻になりつつある薬剤耐性という問題への対処という視点から、きわめて重要である。報告書の示す戦略的アプローチに含まれる行動のいくつかは、「薬剤耐性(AMR)対策のためのヨーロッパのワンヘルス行動計画」の目的に沿ったものである。この「行動計画」は、人と動物の健康、それに環境とのあいだの相互のつながりを考慮した「ワンヘルス」アプローチの必要性を強調している。

欧州委員会は、今回の報告書で示したさまざまな行動をフォローアップしていくとともに、EU加盟国をはじめとするステークホルダーらに対しても具体的行動を求めていくとしている。

[1] http://ec.europa.eu/environment/water/water-dangersub/pdf/strategic_approach_pharmaceuticals_env.PDF