英国に拠点を構える水ベンダIndustrial Phycology(I-Phyc)は2019年11月6日、環境に配慮した新型排水処理システムの商用展開に向けて70万ユーロ(約8520万円)を獲得したと発表した。同社が開発した新型排水処理システムは藻類を活用し、河川や海域の汚染を低減することを狙いとしている。
I-Phycが開発した新型排水処理システムは、排水処理の過程で発生する炭素を藻類が捕集し、炭素排出量の削減にもつながる。また、藻類混合物の表面だけに光を当てる従来の排水処理システムと異なり、藻類混合物の内部まで光が浸透する設計であり、排水処理システムの稼働性能が向上する。その結果、必要とされるタンクのサイズを小型化できることから、小規模な処理プラントへの設置に適している。I-Phycは過去に、Wessex Waterが稼働するAvonmouth排水処理プラントにて、同システムを試験的に導入し成功を収めている。また現時点で、Weston-super-Mareに位置する排水処理プラントにて実証実験が行われている。
I-Phycは今回、英国ベンチャーキャピタルMercia、及び投資基金Midlands Engine Investment Fundの傘下企業が管理するMEIF Proof of Concept & Early Stage Fundと、英国投資ファンドParkwalkが管理するUniversity of Bristol Enterprise Fundからの資金調達に成功した。I-Phycは獲得した資金を活用し、同システムの商用展開に向けて新規チームをBirminghamに立ち上げる。2012年に設立されたI-Phycは最近、Birminghamに本社を新設し、19件に上る新規雇用をもたらせた。
I-Phyc会長Russell Bright氏は、「適性な水質基準を遵守している英国の河川は全体のわずか14%に留まっており、大幅な改善が必要である。新たに制定された規制は、排水に含まれたリン酸レベルの低減を主目的としているため、多くの排水処理プラントにとって既存技術による規制遵守は困難となる。特に、小規模な排水処理プラントはリンの完全除去が不可能である。I-Phycが開発する技術は、化学物質を使用しない天然資源を基盤としており、汚染された河川や海域の浄化を支援する」と、述べた。
Merciaの投資マネージャーであるJo Slota-Newson氏は、「I-Phycは、藻類を活用した排水処理分野においてグローバルリーダーとして君臨する専門家らを有しており、リンによる水質汚染と他の用途(農地/生態系)でのリン不足といった世界的な課題の解決に取り組んでいる。藻類を活用した排水処理技術は大きな潜在性を有しており、排水処理プラントへの適用のみならず、漁業、農業、及び他の産業への応用も可能であるほか、英国だけでなく他の海外諸国でも導入可能であると、我が社は捉えている」と述べた。
一方、British Business Bankのディレクターを務めるGrant Peggie氏は、「今回の動きは、Midlands Engine Investment Fundと我々のパートナーが最優先事項として位置付けている、革新的で成長が目覚ましい事業への投資である。事業成長が著しいMidlandsを拠点とした他の企業に対しても、MEIFを通じた資金調達を検討してもらうことを、我々は奨励していく」と述べた。