中国2014年全国海水利用報告書 – 三、海水の直接利用

本稿は中国国家海洋局のWEBサイトにて2015年8月5日に公開された「2014年全国海水利用報告書」をEnviXが翻訳したものです。
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三、海水の直接利用

(一)プラント規模

海水の直接利用方法には、直接冷却、循環冷却、公共施設や住宅のトイレ洗浄用など生活の雑用水があるが、主な利用方法は直接冷却である。

中国の海水直接冷却技術は、沿岸部の原子力発電所、火力発電所、石油化学などの業種で幅広く利用されており、プラントの海水利用量も年々増加している。2014年末現在、冷却水としての年間海水利用量は1,009億トンで、2014年の増加分は126億トンに達した。図5は、全国の海水冷却プラントにおける年間海水利用量の増加を表した図である。

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図5 全国の海水冷却プラントの年間海水利用量増加図

(二)地域分布

2014年末の時点で、海水直接冷却プラントは、遼寧省、天津市、河北省、山東省、江蘇省、上海市、浙江省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省の11省・区・市に分布し、海水循環冷却プラントは、主に天津市、河北省、山東省、浙江省、広東省に分布している。2014年の年間海水利用量が100億トンを超えた省は、広東省、浙江省、遼寧省、福建省で、それぞれの年間利用量は318.52億トン、253.58億トン、116.17億トン、102.92億トンである。図6は、全国の沿岸省・区・市における冷却用年間海水利用量の分布を表した図。

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図6 全国の沿岸省・区・市の冷却用年間海水利用量分布図

(三)技術の進展と活用

中国の海水直接冷却技術はある程度成熟した状態に達しており、主に沿岸部の火力発電所、原子力発電所、石油化学、鋼鉄などの業界で利用されている。2014年、沿岸部の原子力発電企業の海水利用量は速いペースで増加し、新規建設された電子力発電企業の年間海水利用量は、年間増加量の48.50%を占める61.11億トンに達した。

海水循環冷却技術は、海水直接冷却技術や淡水循環冷却技術を元に発展した環境親和型の新技術である。社会の環境保護に対する意識の向上に伴い、海水循環冷却技術は速い発展を遂げ、幅広く活用されるようになった。2014年末現在、中国の建設済み海水循環冷却プラントは12ヶ所で、1時間当たりの循環量は合計623,800トンに達している。2014年には、珠海横琴火力発電有限会社(1時間当たりの循環量30,000トン)、珠海ガス発電有限会社(1時間当たりの循環量30,000トン)、浜州魏橋発電所(1時間当たりの循環量41,000トン)、滄州華潤渤海火力発電所(1時間当たりの循環量38,000トン)、唐山三友化学工業株式会社(1時間当たりの循環量14,000トン)が相次いで海水循環冷却プラントを建設し、年間増加量は153,000トン(1時間当たり)に達した。

滄州華潤渤海火力発電所海水循環冷却プラント

滄州華潤渤海火力発電所海水循環冷却プラントは河北省滄州市渤海新区臨港化工園区東区に建設された。同プラントは、予備処理されたある臨海の発電所のユニット直流冷却排水を循環冷却補助水として使用する(予備処理技術は、次亜塩素酸ナトリウムの連続注入および非酸化環境保全型滅菌剤の急激注入を合わせて処理する技術である)。同時に、燐(リン)を使用しない環境保全型分解可能なSW203B垢・腐食防止剤を採用し、1.8倍以上の濃縮倍率を実現できた。

同プラントは、中国国内で初めて直流冷却後の直排海水を使って2次循環させ、循環された濃縮海水を付近の製塩場に排出し、塩を作る。これにより、「地域引水―海水2次循環発電-濃縮海水製塩」の発展モデルが構成された。

海水は、公共施設や住宅のトイレ洗浄用など生活の雑用水としても利用されている。2014年には、島嶼雑用水として海水を利用する2件の試験事業が海南省三沙市で立ち上げられた。現在、生活の様々な用途に海水を利用するための主要技術や設備の研究・実証が実施されており、多機能複合凝集剤、新型の海水高速ろ過技術、景観や娯楽用の海水処理などの技術研究も順調に進められている。

 

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