本稿は中国国家海洋局のWEBサイトにて2015年8月5日に公開された「2014年全国海水利用報告書」をEnviXが翻訳したものです。
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» 2014年全国海水利用報告書 原文(中国語)
六、政策と管理
(一)政策企画
2014年、国の関連する部や委員会は、海洋経済の革新や発展を積極的に推し進め、地域の海洋経済発展促進に関する重要文書を相次いで公布し、海水淡水化を重点産業に組み入れた。上記重要文書には、『天津市、江蘇省での海洋経済革新・発展地域モデル実施に関する通知』(財建函[2014]2号)、『広州など8都市での国家海洋ハイテク産業拠点試験事業実施に関する通知』(発改弁高技[2014]837号)、『青島市(西海岸)黄島新区の海洋経済発展支持に関する若干意見』などが含まれる。
沿岸部の省(市)では、海水の淡水化が重点分野とされ、海洋経済の革新・発展事業が積極的に実施された。例えば、天津市、山東省、浙江省などでは、海洋経済の革新や発展を促す事業計画や実施計画が相次いで制定された。上記の計画には、『天津市海洋経済科学的発展モデル区建設および海洋経済発展のさらなる推進に関する事業計画』、『江蘇省海洋経済革新発展地域モデル実施計画』、『天津市省エネ・エコ産業発展加速の実施意見』(津政弁発[2014]23号)、『青島市西海岸新区発展加速の支持に関する意見』(魯弁発[2014]42号)、『黄島新区建設発展の3年実行計画(2014~2016年)』、『青島市省エネ・エコ産業発展計画(2014~2020年)』、『浙江省産業集中区向上発展計画』(浙政弁発[2014]133号)、『杭州市の特徴的な海洋産業拠点の建設実施計画』(杭政弁函[2014]135号)などが含まれる。
2014年2月21日、天津市の人民政府事務局は『天津市省エネ・エコ産業発展加速の実施意見』(津政弁発[2014]23号)を公布および実施し、「海水淡水化産業拠点の建設」を重点任務の1つに加えた。さらに、「臨海新区の海水淡水化モデル区建設を加速し、北疆発電所をモデルとして、水・電力を同時生産する海水淡水化モデルの普及を図り、海水淡水化のモデル企業を数社立ち上げること、海水淡水化関連企業の発展を速め、産業チェーンを形成すること、膜法、熱法および両方を組み合わせた方法による海水淡水化技術の実証や普及により、膜の構成部品、高圧ポンプ、エネルギー回収装置などの鍵となる部品やシステムインテグレーション技術の充実を図ること」が打ち出された。
2014年8月13日、青島市西海岸新区は、『黄島新区建設発展の3年実行計画(2014~2016年)』を公布および実施し、「0.5 km2の海水淡水化拠点の建設を計画し、華欧海水淡水化プロジェクトの推進を速めること、1.5 km2の海水淡水化設備統合拠点の建設を計画し、董家口の膜生産研究開発拠点や海水淡水化プロジェクトを重点として推進を図ること」が打ち出された。
2014年10月14日、杭州市人民政府事務局は、『杭州市の特徴的な海洋産業拠点の建設実施計画』(杭政弁函[2014]135号)を公布および実施し、「杭州市の海水淡水化技術・設備製造拠点を建設すること」、「2017年までに、逆浸透、ナノろ過膜160万m2および中空糸型限外ろ過膜100万m2の年間製造能力を達成し、年間生産能力が1日当たり70万トンに達する水処理設備を実現させ、年間売上高を15億元に到達させること、海水淡水化産業体系の段階的な改善を図り、南東海域海水淡水化産業連盟による生産高100億元以上を達成し、完備された海水淡水化産業チェーンを形成すること」が打ち出された。
(二)事業沿革
2014年3月14日、財政部経済建設司の「海水淡水化産業発展フォーラム」が国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所で開催された。天津市の財政局、天津市発展および改革委員会、天津市海洋局、天津国投津能発電有限会社、大港新泉海水淡水化有限会社、大港発電所などの責任者と専門家を合わせた30人あまりが会議に参加した。
2014年5月14日、国家海洋局主催の「2014国際海洋科学技術およびプロジェクト提携会議」が国家会議センターで開催された。今回の会議では、海水淡水化特別会議が設けられた。また、国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所、曹妃甸工業区、衆和海水淡水化工程有限会社、中冶海水淡水化投資有限会社、杭州水処理技術研究開発センター、貴陽時代沃頓科学技術有限会社、天津膜天膜科学技術有限会社などの関連専門家による基調講演が実施され、中国の海水淡水化技術の進展や産業の発展をめぐって、出席者との高度な検討が実施された。
2014年7月22日、中国科学技術協会主催で、中国海洋学会、国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所、中国科学普及研究所、中国科学技術新聞学会、杭州水処理技術研究開発センターの共催による第42回「科学者とメディアの対面」イベントが中国科学技術会堂で行われた。同イベントでは、「北京・天津・河北省地区での海水淡水化サービス」というテーマをめぐって、技術面、活用面、産業発展政策面から科学的な視点で海水淡水化について解説し、海水淡水化に関する科学的な知識の普及や、北京・天津・河北省地区の水資源不足という状況からの脱却についての探求や説明が行われた。
2014年8月28日、海水淡水化と総合利用関連の科学技術成果を社会全体で共有し、産業化利用への実用化を推進するため、科学技術部は『「海水淡水化・総合利用の主要技術および設備の成果集(意見募集稿)」についての意見を求めることに関する書簡』(国科社函[2014]134号)を発行した。同成果集は、国や地方の科学技術計画プロジェクト担当機関から、実用性が高く先進的な海水淡水化の主要技術や設備に関する成果を募り、専門家による検討を複数回重ねた上で作成されたものである。
2014年9月16日、中国石油・化学工業連合会、中国膜工業協会の共催による「第17回中国国際膜・水処理技術や設備の展覧会」が北京国際展覧センターで開催され、国内外から500社近くの企業および公的機関が参加した。
2014年10月21日、天津市で海洋経済革新発展地域モデルプロジェクトの始動式が行われた。初回に実施を開始する38地域のモデルプロジェクトには、海洋設備プロジェクト21件、海水淡水化プロジェクト11件、プラットフォームプロジェクト6件が含まれている。国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所によって立ち上げられた「海水淡水化と総合利用の革新的サービスプラットフォーム」は、海水淡水化と総合利用の産業チェーン全体を網羅しており、川上や川下の化学研究機関、製造企業、利用機関や管理部門に全面的かつオープンな総合サービスを提供する。
2014年12月29日、中国科学技術協会の承認を経た後、中国ハイテク産業化研究会主催で、中国ハイテク産業化研究会海洋分会、国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所の共催による「中国科学技術フォーラム—海水淡水化ならびに水使用の安全性および海洋ハイテク産業化フォーラム」が天津市で開催された。同フォーラムでは、海水淡水化技術産業の発展、海洋生物学的製薬、海洋の再生可能エネルギー、濃縮海水の総合利用や特許戦略、市場の監督管理などの問題をめぐって、詳細な検討や意見の交換が行われ、政府機関、科学研究所、大学、企業などからの代表者200名近くが同フォーラムに参加した。
(三)国際交流と提携
2014年6月24日、アジア太平洋脱塩協会(APDA:Asia-Pacific Desalination Association)事務局の除幕式が国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所で行われた(画像7)。同事務局は、中国とアジア太平洋各国の海水淡水化産業界間との交流や提携を深めるための国際的なプラットフォームとなり、中国の海水淡水化産業の発展に貢献をもたらすだろう。APDAの理事会メンバーは、アジア太平洋各国の地域協会組織によって構成されており、現在、理事を務めているのはオーストラリア水協会、日本脱塩協会、インド脱塩協会、韓国脱塩協会、パキスタン脱塩協会、中国膜工業協会、シンガポール水協会の計7機関である。
画像7 アジア太平洋脱塩協会事務局の除幕式
2014年6月10日~12日、2014青島国際脱塩大会(画像8)が青島市で開催された。本大会は、中国科学技術協会と青島市人民政府が主催し、青島市科学技術協会、中国水利企業協会脱塩分会、中国金属学会、山東省水生態文明促進会、青島市阿迪脱塩センターによる共催で開催された。20あまりの国や地域から来た脱塩分野の専門家や国内外企業の代表者を合わせた700名以上が大会に参加した。
画像8 2014青島国際脱塩大会
2014年10月6日~9日、環インド洋連合の第14回大臣級会合がオーストラリアのパースで開催された。同会合では、国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所と環インド洋連合の地域科学技術移転センターによって、「中国国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所(ISDMU)と環インド洋連合の地域科学技術移転センター(RCSTT)による技術提携、移転および取引(主に海水淡水化技術)に関する覚書き」が締結された(画像9)。同覚書きは、環インド洋連合の枠組みにおいて締結された正式合意のうち初となる専門分野での提携合意であり、これにより中国と環インド洋連合国間の海水淡水化技術の移転や提携を進めるための基盤が構築された。同覚書きは、中国における海水淡水化技術産業の自主的な発展の推進において重要な意義を持っている。
図9 海水淡水化技術移転提携覚書きの締結式
2014年10月25日~26日、杭州水処理技術研究開発センター、中国海水淡水化・水再利用学会など5つの機関の共催による中国工程院の「気候の変化を背景にした水環境の保護」院士*1サミットフォーラム、第2回海水淡水化および水再利用西湖国際フォーラム(画像10)が杭州で開催された。フォーラムには、ヨーロッパ膜学会名誉会長、イタリアの膜科学者Enrico Drioli(エンリコ・ドリオリ)教授が出席し、総会講演を行った。
図10 第2回海水淡水化および水再利用西湖国際フォーラム
2014年11月26日、インドネシア海洋漁業省(MMAF)の招待を受けて、国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所は、「第8回中国・インドネシア海洋科学研究環境保護提携シンポジウム」(画像11)に参加した。中国とインドネシア双方の専門家による研究や討論を経て、「熱帯の島に適用する海水淡水化技術およびプラントモデル」報告が「中国・インドネシア双方による今後5年間の海上提携発展計画」に加えられた。インドネシアは、中国国家海洋局との提携における対応機関として「海洋・沿岸資源研究開発センター」を任命し、双方はパムカサン県ブンダン(BUNDAN)島(中文:潘德瑪島)の海水淡水化モデルプラント建設で提携する意向に関して合意に達した。
図11 第8回中国・インドネシア海洋科学研究環境保護シンポジウム
2014年12月9日~13日、国家海洋局は、技術専門家グループをモルジブに派遣して、海水淡水化工場の火災問題に対する緊急技術支援や援助を提供した。技術専門家グループは現場の海水淡水化工場の被害状況を調査し、モルジブのナジム国防相を委員長とするマレ特別事業グループと共同で、応急修理作業の重点や今後の改善措置などについて高度な意見交換を行い、今回の淡水危機を解決するための事業計画について共に話し合い決定し、正常な生産への回復を速めるための環境を作った。積極的な協議や話し合いを通じて、今後両国はモルジブのエネルギーや水資源の持続可能な利用という分野での話し合いや提携を強化し、海水淡水化工場の新規建設、ディーゼル機関の廃熱利用、太陽エネルギーによる海水淡水化、国産逆浸透膜の活用および統合型の汚水総合処理などの分野で具体的かつ幅広い提携関係を構築していく予定である。
*1 EnviX注 院士:中国科学院および中国工程院の会員