EUと地中海南岸諸国の“地中海連合”が気候変動・環境問題で協力検討へ

EU27カ国と地中海南岸の12カ国はフランスのマルセイユで2008年11月4日、閣僚級会合を開き、地中海(特に沿岸地域)の観光を取り巻く気候変動・環境問題を検討する必要性を改めて指摘する宣言を発表した。今回の会合では、これらの国々の外相が1995年に開始した“バルセロナ・プロセス”を“地中海連合(Union for the Mediterranean)”と名を変えて継承することが合意された。合意は当初、アラブ同盟加盟を巡るイスラエルとアラブ諸国との対立のために危ぶまれていた。

全28頁のマルセイユ宣言は、“持続可能な開発”の観点からの運輸、農業、都市開発問題での協力のための計画と“環境面での制約”の尊重を改めて表明しているが、その詳細までは示していない。また環境面で2009年に優先すべき事項としては、汚染対策を含む海洋分野での協調や情報・戦略共有のための欧州・地中海気候変動ネットワークの立ち上げ作業などを挙げている。

この地中海連合の2007~2013年の地域戦略書によると、この地域が直面している主要な環境問題としては、水の質と量、産業化や輸送による大気汚染、海洋汚染と沿岸部の劣化、地質の劣化・砂漠化、低水準の都市・産業廃棄物管理、海洋・陸地における生物多様性に対する危機などがあるという。

 

一方、今回の会合では地中海連合の事務局をスペインのバルセロナに設置することが決まった。これについてスペインの外相は「組織体制に関する広範な一連の決定の一部であり、これらの決定は全参加国間の平和的・協力的関係の強化に資するであろう」と声明で言及した。このほか地中海連合は、EUと地中海南岸諸国の双方から議長を出す共同議長制を取ることや、事務局の他に各国高官の会合を準備する共同常設委員会(Joint Permanent Committee)をベルギーのブリュッセルに置くことも決めた。同委員会は、各国外相の指示の下、この取り組みの進捗状況を評価する。地中海連合の戦略上の優先事項は、隔年で開催される首脳会議で承認されることになる。なお各国の環境相による会合が2009年に計画されている。

今回の宣言の全文はインターネットの以下のURLで閲覧可能。
http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/misc/103733.pdf