欧州環境庁レポート ――EUは価格設定や再利用によって水需要を制限する必要がある

2009年3月17日、ヨーロッパ環境庁(EEA)は、ヨーロッパは水の需要と供給力のバランスが崩壊の危機にさらされるという重大な局面を迎えている、と発表した。特に、ポルトガルやスペイン、フランスの河川流域とドイツやイギリスの人口密集地帯の河川流域は、過剰取水によって危機に瀕している、とコペンハーゲンを本拠とするEEAが作成した、この水不足と渇水の管理に関するレポートは述べている。

レポートによると、EU各国政府は水の需要を制限する政策を導入すべきであり、供給量を増やすという政策は、導入してもいずれ気候変動で危機に瀕することになるという。EEAのMcGlade長官は、ヨーロッパ人は水の利用に関しては分不相応に生きてきた、としたうえで、無制限な需要を満たそうとしてさらなる取水を行うと、現在残っている水の質や量のみならず、その残った水に依存している生態系にも重大な影響を及ぼしかねない、と指摘した。

EEAは、各国政府が取り得る主な手段は、価格設定によって水需要を加減することだ、と述べている。また、コストを反映した水の価格設定は、全産業・農業分野と同時に家庭での消費にも導入されるべきであり、また、価格の設定は定額ではなく、使用量に応じたものであるべきだ、とEEAは付け加えている。

さらに、今回のレポートによると、栽培する穀物の選定の変更も含めて農業生産活動のより良い計画を練ること、水を再利用すること、違法な取水に対して制裁を科すこと、整備が不十分な水供給網での無駄をなくすことなどによって、水の需要を減らすことができるという。また、EEAは、(1) 加盟国政府は渇水を防ぐ計画を策定する必要がある、(2) バイオエネルギー穀物の栽培は大量の水を必要とするため、水不足に悩む地域では避けるべき、などと指摘している。