米国地質調査所(USGS)は2008年12月5日、いくつかの公共飲料水の源水で検出された殺虫剤から香料までのさまざまな有機化合物にはいずれは人の健康を守るための新しい基準やそれらを除去するための新しい処理技術が必要になる可能性があると述べた。
Man-Made Organic Compounds in Source Water of Nine Water Systems that Withdraw from Streams, 2002-2005(川から取水している9つの水道の源水中の合成有機化合物、2002~2005年)という報告として発表された調査では、たとえば、農薬、ガソリン炭化水素、パーソナルケア製品や家庭用製品、殺菌副生物、製造用添加剤などが見出された。その中には、安全飲料水法(SDWA)で規制もモニタリングもされていないものがある。
なお、源水は、水処理場で処理するために取水口から取り入れられた地表水のことである。
この報告の概要は、次の通り。
- 源水の試料中にもっともよく見出された化学物質は、水処理の副生物であるクロロホルム、除草剤のアトラジンとシマジン、アトラジンが環境中で分解してできる化合物であるデエチルアトラジン(deethylatrazine)、そして、たとえば、香水、洗濯洗剤、洗浄剤、消臭スプレーなどの多くの家庭用品や個人用品に使われている香料HHCBであった。
- 源水と処理水両方の試料の4分の3以上には5種以上の同じ化学物質が含まれていた。
- このような化学物質の複合毒性は、混合物中の単独の汚染物質の毒性より強い可能性があるが、人の健康の基準は、個々の化合物の毒性に基づいているので、化合物の混合物の影響はよく分かっていない。
- 検出された134種の化合物の95 %の個々の濃度は、1 ppbより低かった。
- 約半分の化学物質は、源水と処理水の試料の両方で検出された。
- 汚染物質の濃度は、たとえば、農薬が作物に使われる時期などの要因によって季節によって変わる可能性がある。いっぽう、廃水からは、たとえば、クロロホルムやHHCBといった化学物質が比較的一定の濃度で検出された。
- 大多数の化合物は、常に検出されたわけではないし、短期的にしか検出されない化合物もあったので、それらの発生源、移送の仕組み、環境中でのなりゆき、生態系や人の健康に対する影響の可能性などについてもっとよく理解するために研究を続ける必要がある。
USGSでは、今回は9つの水の調査であったが、もっと多くの水の調査を考えている。
なお、上記報告は、以下のウェブサイトで見られる。
http://pubs.usgs.gov/fs/2008/3094/pdf/fs2008-3094.pdf.