英国でウォーターフットプリント表示ラベルを食品に貼付する要求が高まる

英国の食品及び健康グループは2009年7月中旬、英国内で販売される食品には、それが製品として生産されるまでに使用された水資源の量などを意味するウォーターフットプリント(water footprint)を表示したラベルが貼付されるべきであり、このラベルは、水の使用量だけでなく節水量や水の使用効率などのファクターも考慮に入れたものでなければならない、と表明した。

 

このラベルは、環境負荷の範囲や大きさを示すマルチ・クライテリア持続可能性ラベルの1形態となるものである。単に、「キロ当たり何リッター(の水を使用)」という負荷に基づいた水ラベルではなく、もしそうなら多くのステークホルダーの反発を買うことになるので、このラベルは、食品産業における持続可能な実施要領(practices)を認知し評価するものといえる。

 

これに関連した動きとして、英国議会の環境委員会は、2009年7月21日に公表した食品の安全(security)に関するレポートの中で、英国政府に対して、水の消費量を含め、食肉や酪農製品が環境に及ぼす負荷に対する消費者の意識を高揚せしめるよう要請していた。

 

ウォーターフットプリント(water footprint)の定義

なお、ウォーターフットプリント(water footprint)の定義として比較的に良く使われているものとして、「どの国のどういう水源(耕地への雨水、自然の河川水、大規模貯水池からの放流水、非持続的な地下水)からの水が食料生産に使用されたかを示す指標」(東京大学生産技術研究所)といった学術的なものから、「ある製品がどの程度水環境に負荷をかけて生産されたものであるかを消費者が判断できるような指標」といった消費者の目線からのものがある。

 

Water Footprint Network(WFN)

また、ウォーターフットプリント(WF:water footprint)に関する産業界の取組みとして、2009年に入ってから欧州でこれに取組む企業連合が組織され、シンポジウムやセミナーが開催されるようになった。これはWater Footprint Network(WFN)で、民間企業だけでなく、研究者、政策策定者(政治家)及び政府機関なども組入れたネットワーク組織であり、その目的はウォーターフットプリントの概念を発展させ、それに対する意識を各階層で高揚させることであるとしている。

このWFNはこのウォーターフットプリントの定義について、「製品のサプライチェーン全体を通じて、どの程度の量の水がいつどこで消費され測定されたのかを示す経験に基づいた指標」としている。

いずれにしても各プロセス(下記参照)における製品やサービスの生産に使用された水の総量を測定することによって、ウォーターフットプリントは、製品やサービスが淡水系に及ぼす環境負荷を評価するとともに、そうした負荷を軽減するための対策を策定するためのベースを提供するものとなるとしている。

水を消費する主なプロセス:

  1. 農場
  2. 食品加工業者
  3. 小売業者
  4. 消費者

日本における工業製品の生産に使用される工業用水取水量(例)

  1. 乗用車1台: 65m(立方メートル)
  2. パソコン1台: 4m3(立方メートル)
  3. ビール1リットル: 16リットル

ISOサブ委員会でのウォーターフットプリントISO規格策定に向けたWG8の創設

2009年3月にはISOの会議でスイスよりウォーターフットプリントのISO規格策定の提案が出され、2009年6月にカイロで開催されたISOTC207(第207技術委員会)総会では、ライフサイクルアセスメントを担当しているサブ委員会5(SC5)にてウォーターフットプリントに関するWIを策定するために新しいワーキンググループ(WG8)が創設されることとなった。この事務局はスイスが担当しており、今後さらに産業界にウォーターフットプリントの概念が浸透し運用されてゆくものと思われる。