シドニーの海水淡水化、2009年夏に稼働へ

ニューサウスウェールズ州のBob Carr前知事がシドニーの水不足を解消する計画を発表してから4年が経過した。このプロジェクトは順調に推移し、2009年夏に稼働をはじめることが明らかになった。フル稼働すれば、これによってシドニーの水供給量の15%をまかなうことができる。

これは海水淡水化のプロジェクトで、脱塩プロセスが完璧すぎるために、淡水化された水をそのまま既存の水道システムに投入するわけにはいかず、ミネラルその他を再添加してから水道水として供給することになる。

そこで働くひとたちから造水工場と呼ばれているこの淡水化プラントは、現在、80%が完成しており、6月に試運転がはじまることになっている。

 

淡水化プラントは、シドニーのErskinevilleに建設中の水道送水施設と、全長18キロメートルのパイプラインでつなげられる。パイプラインはすでに3分の1が完成している。

また、海岸から300メートル沖合のタスマン海上に浮かぶ巨大な作業船では、海底の掘削作業がはじまっており、ここから取水および排水のパイプが淡水化プラントまで敷設されることになる。

タスマン海で取水された海水は淡水化プラントに送られ、高圧をかけて逆浸透(RO)膜を通すことにより脱塩される。プラントでは、およそ3万6000のRO膜が4000本の棒状の容器に納められており、これがサッカー場2面分もある建物の内部を床から天井まで埋めつくしている。また、プラントの厚い壁には、高圧ポンプの甲高い騒音から労働者をまもるための工夫がこらされている。

 

装置の多くは外国製で、主要な部分が17ヵ国から供給されている。最大の課題は腐食対策で、そのために最高グレードのステンレス鋼が使われている。

淡水化の過程で濃縮されたブラインは、海中に放出される。ブラインは通常の海水の2倍の濃度だが、科学者たちは、これが海洋生物に影響することはあまりないと見ている。

この淡水化プラントの造水能力は年間2億5000万リットルで、必要ならばこれを2倍に拡張するのにじゅうぶんな敷地が残されている。

 

このプロジェクトの完成までに、プラントや海底トンネルの工事をしたBluewaterや、その他の工事を手がけたWater Delivery Allianceなど、合わせて4000人以上の労働者がかかわってきたことになるが、完成して運転がはじまれば、プラントで働く従業員はわずか12人になる。

 

BluewaterのJohn Barracloughプロジェクト・ディレクターはこのプラントの建設を、水供給に関してはニューサウスウェールズ州最大のエンジニアリング上の偉業であると評し、こう述べている。「地面に穴を掘り、パイプを突き立てる時代は終わった。技術だけでおよそ3億ドルだ――それも、パイプや建物の話ではなく、部品だけでこれだけの規模になるのだ」

天候にめぐまれ、パイプの敷設にこれといった障害が起きなければ、淡水化プラントはこの夏に稼働を開始し、ダムの貯水量にかかわりなく水の供給をはじめることになる。現在、シドニーの水源のダムは、じゅうぶんな雨が降ったあとでも貯水率が60%といった状況である。

淡水化プラントは当面、2年間はフル稼働し、そのあとは、州政府が稼働率を決めることになっている。

淡水化による水の確保を批判するひとたちは、同じカネを使うなら水リサイクルや節水に使うべきだと主張している。

 

しかし、シドニー水道局のデータによれば、かつてピーク時には1人1日あたりの水の消費量が550リットルだったものが、現在では1人1日あたり330リットル以下になるまでに節水が進んでいるという。シドニー市民は今日では、1950年のころとくらべて水の消費量がかなり減ってきているのである。

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