米国海軍の海軍研究局(ONR)の2009年9月23日のプレスリリースによれば、新しい海水淡水化技術が、船上や陸上にいる米国軍隊や人道的な任務のために準備されつつある。
ONRは、船上の部隊、海兵隊遠征軍、陸上での人道的な任務などのために「現在の生産効率の2倍で飲料水を作り出すための革新的なソリューションの開発」を後援している。
J. Paul Armistead博士は、ONRのプログラムの浄水担当の士官であるが、「エネルギーを節約して汚染物質が含まれない水を生産することは、海軍にとって戦術的な問題である。われわれは、現在の海軍の逆浸透(RO)システムと比較して、エネルギーを65 %少なく使い、重量と体積で40 %小さくなる淡水化装置の試作品を作るつもりである。この装置では、保守についてもおおよそ75 %少なくて済むはずである」と述べた。
海上にある船舶と陸上にいる海兵隊のために飲料水を少ないコストと少ないエネルギーで供給することは、「遠征部隊浄水プログラム(EUWP Program:Expeditionary Unit Water Purification Program)」のもとで2004年ONRの優先事項となった。
現代の海水淡水化装置ができるまで、船員は、船上にいる間、水を集めて容器にためた雨水に頼っていた。今日、水兵や海兵隊員は、ほとんどの軍艦に搭載されたハイテクのROを利用した海水淡水化装置の恩恵を受けている。
ROシステムで水を生産するためのエネルギーは、燃料を燃やして、タービン発電機を回転させて生み出す電気である。
より効率の良い船上の海水淡水化設備ができれば、軍用船は、燃料使用が減り、戦闘能力が伸び、カーボン・フットプリントも減るので、もっと効率的なものになる。
開始以来、EUWPプログラムは、海水淡水化装置の性能を進歩させてきた。
第1世代のEUWP技術を世間に知らしめるための装置は、軍隊がもっとたやすく運搬でき、またさまざまな任務のために使える配備可能な高度な水生産装置として設計された。実際、この装置は、2005年にハリケーン・カトリーナで被害を受けた人々が入院していた病院の近くのメキシコ湾の海岸にトラックで運ばれて、そのような人々に安全な水を供給した。
また、第2世代の装置は、船上の制限を考慮して作られた、もっと大きな装置で、孤立した地域社会でも使える可能性があるものであった。
Armistead博士は、「現在の海軍の海水淡水化システムでは、供給した海水の20 %しか淡水にならないが、この新しいシステムではおそらくその2倍の淡水が得られる」と述べた。
このプロジェクトに詳しいほかの専門家は、ONRが進展させている進歩した技術は、直接陸上に適用できるし、商品化もできる可能性があると述べた。