世界の塩水淡水化市場の成長は記録的なペース――その施設の環境影響にも対処

国際塩水淡水化協会(IDA:International Desalination Association)は2009年11月8日のプレスリリースのなかで、22nd GWI/IDA Worldwide Desalting Plant Inventory(第22回GWI/IDA世界の塩水淡水化施設一覧表)によれば、世界の塩水淡水化市場は、海水淡水化に対する需要によって、記録的な速度で成長していると述べた。

この報告書は、11月12日まで開催された「IDA世界塩水淡水化・水リユース大会(IDA World Congress on Desalination and Water Reuse)」において、IDAとGlobal Water Intelligence(GWI)が11月8日に開いた「塩水淡水化の状況」の説明会にて発表された。

現在稼動中の塩水淡水化施設の総容量は、5990 万m3/日である。この総容量は、昨年より660万m3/日増加したが、これは、単年に稼動した塩水淡水化施設の容量としてはこれまでの最大である。

2008年には700の新施設の運転が世界各国で開始されたが、そのなかには世界最大の88万m3/日のサウジアラビアにあるShoaiba 3プロジェクトも含まれている。

現在14,451の塩水淡水化施設が稼動中である。さらに分かっているものだけで合計で910万m3/日の容量となる244の施設が契約されたかあるいは建設中である。

もっとも増えているのは、海水淡水化施設である。2007年11月に開かれた前回のIDA世界大会以降、海水淡水化施設の設備容量は、29.6 %増えて、3590万m3/日となった。2009年はこれまでに、460万m3/日の海水淡水化施設の容量が追加されたが、海水淡水化に対する需要は劇的に増える見込みである。

IDAのLisa Henthorne社長によれば、世界最大の稼動中と計画段階の塩水淡水化施設はともに中東地域にある海水淡水化の施設である。

GWIとDesalDataの出版業者Christopher Gasson氏は、「海水淡水化は、今日100億ドル(約9200億円)産業であるが、われわれは、2020年には160億ドル(約1兆4800億円)産業になると予測している」と述べた。

また、「塩水淡水化の状況」の説明会では、IDAのTom Pankratz取締役は、環境への懸念を取り巻く問題に対処する塩水淡水化産業による取り組みに言及した。その要点は、次の通り。

環境影響を軽減するプロセスは、塩水淡水化施設の立地から始まる。淡水化の工程自体も検討しなければならない。立地場所も施設もさまざまなので、新プロジェクトのための設計そして建設を始める前に、数年かけて調査、モデル化、および予備的試験を行なう必要がある。

海洋生物の保護は、重要な関心事である。そのために取水口と排水口の新しい代替案ができている。計画は、海洋生物学者、毒物学者、水文地質学者、海洋学者などの専門家のグループによって検討されなければならない。モニタリング・プログラムも環境責任における重要な段階である。この業界では、濃厚な排出物の影響を減らすために用いることができる選択肢がいくつか開発されているし、さらなる影響の削減が見込める新技術もある。

この業界はまた、エネルギー消費量を減らし、温室効果ガスの排出を大幅に減らすために多くのことをしてきた。技術が進歩した結果、この15年間で、エネルギー必要量は最大で半減した。さらに、塩水淡水化施設に必要なエネルギーを供給するための風力、太陽光あるいは波力などのエネルギー源を検討するプロジェクトなど、さらにエネルギー必要量を減らす見込みがある数多くの研究プロジェクトが進行中である。

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