2010年2月11日、米国の投資家、企業、環境団体などの連合組織である「環境に責任を持つ経済のための連合(セリーズ/Ceres)」が「Murky Waters? Corporate Reporting on Water Risk: A Benchmark Study of 100 Companies(水が濁っている? 企業による水リスクの報告:指標銘柄100社の研究)」という報告書を発表し、世界的に水危機の接近が叫ばれていながら、多くの企業が投資家に対して自社の水リスクに関する情報を開示する責任を十分に果たしていないと指摘した。
この報告書の中で、セリーズはとくに水リスクに弱いとされている飲料水、化学、電力、食品、住宅建設、鉱山、石油・天然ガス、半導体の8つの業界から世界の主要企業100社をピックアップし、各社の水リスクに関する情報開示の現状を分析し、100点満点で採点を行っている。この報告書は、1月27日に証券取引委員会(SEC)が企業に対して気候変動に関する情報の開示を求めるガイダンスを承認したのを受けて発表されたものであり、SECはそのガイダンスの中で、株式を公開している企業には、自社の事業に影響を及ぼす可能性がある水危機に関する情報も含め、気候変動に関するリスクやチャンスの情報を開示する責任があることを明確にうたっている。
今回発表した報告書の中でセリーズが行っている採点では、鉱山業界の点数が最も高く、次が飲料水業界で、住宅建設業界の点数が最も低くなっている。また、個々の企業の中では、英国の飲料水メーカーDiageoとスイスの鉱山会社Xstrataと米国の電力会社Pinnacle West(Arizona Public Servicesのオーナー)の採点が最も高くなっている。だが、それらの企業の採点にしても、それぞれ43点、42点、38点であり、セリーズのミンディ・ラバー会長は発表した声明の中で、「これまでの企業の水危機に対する注意や関心は、迫りくる世界的な水危機の影響の重大さを考えると、とても十分と言えるレベルには達していない。この限りある資源は今、脅威にさらされている。企業はもっと積極的に自社が直面する可能性がある水危機や、それに対応する戦略に関する情報を開示していかなければならない」と述べている。
SECで承認されたガイダンスをもとに、セリーズはこれからの企業に対して次のようなことを勧めている。(1)財務報告の中に水危機に関する情報を盛り込み、自社がどのような水危機に直面する可能性があり、それにどう対処しようとしているかを、投資家が適切に判断できるかたちで開示すること。(2)その情報もただ漠然と通り一遍の言葉で伝えるのではなく、具体的に、定量的に伝えること。(3)水収支に関する情報は企業全体のものだけにとどめず、施設単位で細かく開示すること。(4)自社がその水危機をどう認識し、それにどう対処しようとしているかを伝えること、などである。