ドンナイ省当局、ドンナイ川流域の環境汚染対策の必要性を認識しつつも、具体的な対策や投資は見られず

ベトナムのホーチミン市資源環境省は、2010年1月、同市人民委員会と協力して、ドンナイ川(Dong Nai流域の環境保護を目的とした会議を開催した。12の関連各省のリーダーがすべて参加し、彼らは同流域が汚染の原因で死んでしまう前に汚染防止が必要であると全員賛同したが、残念ながら、出された対策のほとんどが力強さのない無力なものであった。

 

同会議で、同資源環境省の実施による2009年末の新規検査結果が示され、それによればドンナイ川流域の上流・中流・下流の水質は汚染の兆候を示しており、多くの環境指標は警報レベルにあって認許可基準を超過していた。その中でも、有機汚染、微生物汚染、重金属汚染及び油汚染などが深刻なことが確認された。

その一方で、同河川流域の上流にある森林、土地、水源、鉱産資源、生物多様性などが過度の開拓により回復出来なくなっている状況にあり、多くの地域で風景の破壊や河岸の浸食・くずれなどの被害が拡大しているという。

 

上記の汚染や被害の実態に関連して、環境保護局のBui Cach Tuyen局長はこれらの深刻な汚染の主な原因を次のように説明した。

 

(1)    ドンナイ川流域はベトナムの中でも最も都市化が進み、サービス産業や、商業及び工業が発展した地域であり、全国の工業GDPの約58%を占めている。2008年から2009年にかけて起きた世界経済危機による影響を受けたものの、ドンナイ川流域における各省の経済成長は約10%以上を達成した。

(2)    この流域は人口過剰地帯と見られている。人口約1500万人を有し、全国の人口の約16%を占める。その中、都市人口は全体の約50%を占め、また増加している傾向にある。

(3)    同河川流域には、現在、たくさんの工業団地や生産企業が存在しているが、それらには廃水・廃棄物処理処分システムが備えられておらず、また設置されていた場合でも効果的に運営されないのが実情である。それ以外に、都市廃水の処理処分システムが存在せず、工業固形廃棄物・有害固形廃棄物の収集も十分に行われていない。

 

実際には、ドンナイ河川システム流域の汚染はかなり以前から警告されていた。ようやく、ドンナイ川流域の環境保護委員会が2008年に設立されものの、設立されてから2年経過した現在でも、同委員会は効果的に機能していないようである。

 

上述の環境保護局長によると、市人民委員会は同河川流域における全分野・全地域の指導組織なので、すべての決定は一致の原則に基づいて行われなければならないという。したがって一致しない限り各省はあまり拘束されない。その上、同委員会のメンバーは各部、各地方のリーダーを兼任しているため、全体の問題の解決のためというより地方の利益を優先しがちである。また、資金調達が厳しく、同流域向けの環境保護プロジェクトの展開が頓挫している。現段階では、ロンアン省を除けば、他の11省のすべてでドンナイ河川流域保護対策実施指導グループが設立されていない。さらに、同河川流域保護グループの活動経費がまだ充当されていない。こうした問題の根底には、同河川流域の保護に関して、規制当局、工業生産拠点、各地方の住民の意識がまだ低いことが原因になっているとみられている。