設備更新を求められるオーストラリアの水処理業界に大きなビジネスチャンス

世界の企業経営者にトレンド情報や市場見通しを提供しているコンサルタント会社Frost & Sullivanがオーストラリアの水処理市場に関する見通しをまとめた報告書「オーストラリアの水処理・廃水処理市場――市場の展望と成長の機会(Water and Wastewater Treatment Markets in Australia – Market Outlook and Growth Opportunities」を発表している(2009年11月13日)。

オーストラリアでは、人口が増加している上に、2002年以来、深刻な水不足の年が続き、既存の水処理施設に大きな負荷がかかっている。経済は成長を続けているが、それがまた、水需要を増大させる要因になっており、現在の慢性的な水不足傾向を解消するためには、最先端の膜バイオリアクター(MBR)技術などを取り入れて、水処理施設や廃水処理施設を大幅に刷新していく必要に迫られている。

水処理施設や廃水処理施設が普及しているオーストラリアでは、水市場が成熟期を迎えている。「設備の信頼性を高め、効率をよくし、厳しくなる一方の規制の要求にも応えられるものにしていく段階を迎えている。多少費用はかかるが、従来の旧式な浄化設備に依存したシステムを効率的で近代的なシステムに転換していけば、それだけビジネスチャンスも生まれるわけであり、これはいい機会である」Frost & Sullivanの調査アナリストSwathy Rajasekaranはそう述べている。

景気が下降し、設備メーカーの利益が圧迫されている現在の状況を考えると、導入予算が問題になることは間違いないが、それでもあえて国の内外から投資を募り、設備を刷新することによって、国の基盤が近代化され、経済にも活気が吹き込まれ、オーストラリア全体の競争力が強化されることになる。「より厳しい規制をクリアしようとすれば、それだけ技術が進歩し、競争が生まれ、市場が活気づく」客員コンサルタントのMelvin Leongもそう述べている。

それでも、現在の景気動向では、2010年上半期も水処理・廃水処理市場は停滞を続ける見通しだが、オーストラリアの経済は欧米諸国の経済より回復力があり、早い時期に上向きに転じる可能性がある。「水処理事業や廃水処理事業を行っている企業にこのチャンスを生かすだけの余力がないとすれば、主な水ユーザが設備メーカーと組んで、どんどん新しい設備の導入を進めればよい。これまで労働集約型だったこの業界には、それなりに技術を持った労働力が豊富に存在するので、そうした労働力を取り込んで、景気の刺激につながる技術の刷新を進めていけばよい」Leongはそう提言している。