南アフリカの水セクターが大きな課題の前に立たされている。同国ではここ数年間内に、莫大な関連インフラ整備が必要とされている。水関連インフラ建設を司る水務・森林省 (DWAF)では、ダム建設ならびに水道網整備への投資額は2018年までに少なくとも約27億ユーロ(約3,500億円)に達するとしている。一方、水不足を背景に、節水や水処理技術の重要性もますます高まっている。水が貴重な有価物であるという価値観をいま、国民全体に浸透させなければならない。
黒人住民における水需要
昨今の急速な経済成長に伴って黒人住民の水道網アクセスが急増していることにより、水インフラ整備の需要が急激に伸びている。1995年から2008年の間に、南ア政府の助成による「低価格住宅(Low-Cost-Houses)」が、タウンシップス(非白人居住地域)において約230万件新設されている。これに伴い、自治体上下水道網へのアクセスが拡大している。DWAFによると、現在、まだ飲料水供給網へアクセスを確保されていない国民の数は、国民全体の約5%にあたる約240万人である。1994年にはこの値が41%であったことを鑑みると、急速にインフラ整備が進んでいることがわかる。
水供給事業の民営化
同国では、水はガスよりもさらに「公共財」であるという考え方が根強く、公共の財産であるべきだという声が一般的だ。しかし、DWAF内では、水供給事業から政府が手を引く、ないしは少なくともPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)方式を導入すべきであるという意見が出ている。
汚水法(Waste Water Act)
DWAFは2007年に、「汚水法(Waste Water Act)」改正案を国会に提出しており、専門家によると本法案はまもなく採択される予定だ。同法案が発効すると、産業由来の排水処理料金が現在より大幅に引き上げられることになる。そのため製造業者サイドでは、工場敷地内に自社の水浄化処理システムを整備しようという動機が高まっている。向こう数年間で、関連システムの需要が飛躍的に高まることは必須だ。
製造業における節水ポテンシャル
南アフリカの製造業界における水消費量削減の余地はまだ大きい。
例えば、食品業界。業界各社にとって最大の悩みは水質の悪さだ。飲料水は自治体の上水網を通して得られるが、一部の地域では自社内で再処理をしてからでないと食品生産には使用できない。コカ・コーラ社では、1リットルの製品を生産するのに約3リットルの水を消費している。また、乳製品メーカーでは乳清をそのまま下水道に流しているが、フィルター処理によって得られる乳清パウダーの市場取引価格を考慮すれば、フィルター処理施設を整備する方が得であることが明らかになっている。
鉄鋼・自動車業界でもまだ水の消費を節約することができる。南アフリカでは、金属表面加工における電気メッキおよびリン酸塩処理プロセスで排出される廃液が、自治体の下水道網に直接流れ込んでいるケースがある。適切な技術を導入して、こうした産業廃水の浄化・再利用を可能にする余地は大きい。製紙業界でも同様である。