2010年4月12日、各種の新技術に関する調査・コンサルティングを行っているLux Researchが「Technologies Turn Waste into Profit(技術が廃水を金に変える)」と題するレポート(https://portal.luxresearchinc.com/research/document_excerpt/6279)を発表し、これまで処分するのに金のかかる厄介物としか考えられていなかった廃水汚泥が、エネルギーやリンなどの宝庫として注目を集めていることを伝えている。これを受けて、廃水処理施設などの公益事業体は、汚泥から貴重な資源を回収する技術を模索しはじめている。これらの技術が成熟してくれば、現在は250億ドル(約2兆2000億円)程度の資源回収ビジネスの市場規模が2020年には450億ドル(約4兆円)にまで拡大するとLux Researchは予測している。
廃水汚泥の処理・処分の費用は廃水処理費全体の20~50パーセントを占めるため、その費用を相殺し、場合によっては儲けも出せる可能性がある廃水汚泥からのエネルギーや鉱物などの資源回収技術には、大きな注目が集まっている。なかでもエネルギーの回収技術は最も有望視されており、2020年には資源回収ビジネス市場の64パーセントを占めると見られている。
「廃水汚泥の処理・処分は、しないわけにはいかない作業だが、規制が厳しくなっているために、それに伴う費用が増大する一方だった。このため、その費用を軽減し、廃水汚泥中の隠れた宝物を回収することのできる技術を模索し、採用しようとする公益事業体が増加してくるものと思われる」Lux Researchのアナリストで、前記のレポートをまとめたHeather Landisはそう書いている。
Landisは、廃水汚泥からの資源回収技術の現状について、以下のような見方をしている。
汚泥からバイオガスを抽出するのが、採算面では最も期待の持てる技術である。超音波キャビテーション、機械的分解、熱加水分解などの技術は、汚泥からバイオガスを抽出する一般的な手法である嫌気性消化の効率改善をねらっている。これらの前処理技術はバイオガスの生産量を40~50パーセント高めており、技術的な完成度は高い。
汚泥から代替燃料を取り出すのも有望な技術である。ガス化、熱分解、超臨界水酸化などの技術を利用すると、汚泥から合成ガスやバイオディーゼルなどの代替燃料を取り出すことができる。これらの手法も、エネルギー収支がよく、資本コストもそれほどかからず、固体の除去率も高いので、技術的な完成度は高い。だが、これらは同時に装置集約型の技術であり、導入されている事例も限られているので、商業的な成熟度は低い。
栄養や有用物質の回収技術は壁にぶつかっている。この範疇に属する13技術のうち12の技術は、技術的な完成度も商業的な成熟度も低い。ひとつには、エネルギー集約型の複雑なプロセスに頼って汚泥からリンなどの物質を取り出しているからである。だが、最小限の化学物質と単純なプロセス設計を用いて廃水から最高で85パーセントのリンを回収している結晶化の技術は例外である。
「これから人口が増加し、世界各国の経済力が増してくるにつれて、廃水汚泥の発生量はますます増加すると思われる。その汚泥を宝に変える技術が成熟してくると、汚泥処理の世界は企業家や投資家にとって新たな豊穣の大地となるだろう」Landisは、廃水汚泥処理の世界をそう表現している。