水不足と水質汚染が中国の主要産業の成長を阻害――Asia Water Project報告書

中国本土と香港に拠点を置くシンクタンクAsia Water Projectは2010年2月25日、Water in China: Issues for Responsible Investors(中国の水問題:責任ある投資家のために)と題する報告書を発表した。このなかでAsia Water Projectは、中国では水質汚染と水資源の減少が主要な産業の成長をさまたげ、同国の次の発展段階において投資家の潜在的リスクの原因になりそうだと述べている。

報告書は、水不足による直接の経済損失は毎年およそ350億ドル(約3兆3000億円)にのぼり、これは洪水による年間の被害額の2.5倍にあたると指摘している。

報告書はまた、中国の河川と湖沼の70%は「重度に」汚染され、都市の50%で地下水源の汚れが見られ、都市の30%以上が酸性雨の影響をうけているという。

鉄鋼、飲料、農業、繊維、製紙、林産など、水への依存度が高い産業は、水危機のために「利益に重大な潜在リスク」を負うことになるだろうと報告書はいう。水質汚染と水不足が10種類の産業分野にもたらすリスクについて、報告書にはケース・スタディも示されている。

報告書の編集責任者Lucy Carmodyは、政府や産業界が迅速な行動をとらなければ「経済成長がさまたげられるだろう」という。

そうならないためにも、投資家、企業グループ、それにNGOなどのシビル・ソサエティが先頭に立って、問題に正面から向き合うよう政府や産業界に圧力をかけなければならない、と報告書は述べている。また、水質汚染が原因で社会不安が増大するだろうと報告書は予想している。

中国の水危機は、反面、節水のイニシアティブや技術という面では企業や投資家にチャンスをもたらすものでもあると報告書は指摘する。

Asia Water Projectの依頼をうけてこの報告書を実際に作成したのは、独立した研究グループであるResponsible Researchで、資金はADM Capital Foundationが提供した。

いっぽう、国営の新華社が2010年3月4日に報じたところによると、水利部の国家治水旱魃救援本部は、中国南西部の広西チュワン族自治区、重慶市、貴州省、雲南省、および四川省で、旱魃のために最大1500万人の飲み水が不足していることを明らかにしている。

最も被害の大きいのは雲南省で、ここでは600万人の水が不足している。

中国共産党の機関紙である人民日報も、2010年3月3日付の記事で、重慶市の200万人の水がめである大貯水池が干上がる寸前であることを報じている。