“安全で清浄な飲料水および衛生施設へのアクセスは人権である”――国連総会決議

2010年7月28日、国連総会にて、“安全で清浄な飲料水および衛生施設へのアクセスは人権である”との決議がなされた。同時に、国連総会は、世界中で9億人もの人々が安全な飲料水を手に出来ない状況に深刻な懸念を表明し、国連加盟国および国際機関に対して、途上国の浄水供給および衛生施設設置を推進させるために、資金や技術を提供するよう勧告した。研究によると、汚染された水あるいは公衆施設の不備に起因する疾病によって死亡する5歳以下の子供の数は、毎年150万人に達する。また病のために毎年4億4300日に相当する子供の教育の機会が奪われているとのことである。

8億8400万人が安全な飲料水を手に入れることができず、また26億人の人々が基本的な公衆衛生施設にアクセスできない現状に懸念を表明する同決議には、122ヶ国が賛成票を投じた一方、反対票は皆無であった(41ヶ国が投票を棄権)。同決議は、国連人権理事会が、水と公衆衛生にかかわる人権問題を調査している独立専門官“Catarina de Albuquerque氏”に対して国連総会に毎年報告を行うよう求めていることについて、歓迎の意を示している。Albuquerque氏は、現在、水へのアクセスという基本的人権に民間企業がどう携わるかについて調査を行っている(EnviX Water Business Journal 35号参照)。

Albuquerque氏は、日本における“水および公衆衛生と人権”の問題について調査を行うため、2010年7月20日から28日にかけて訪日した。Albuquerque氏は、日本のほぼ全ての国民が安全な水および公衆衛生施設に対してアクセスできる状況を賞賛し、また革新的な水処理技術が利用されていることに賛辞を送った。一方、在日韓国人が居住する京都ウトロ地区など、一部の地域で水道水が得られない状況に対して懸念を表明した。

Albuquerque氏が訪日を終えて発表したコメントは、以下URLより閲覧できる。
http://unic.or.jp/unic/press_release/1714/

また、7月28日の国連総会決議に関する情報は、以下URLにて閲覧できる。
http://www.un.org/News/Press/docs/2010/ga10967.doc.htm

EnviXコメント

法的拘束力を有するものではないとはいえ、国連総会で“安全で清浄な飲料水および衛生施設へのアクセスは人権である”との決議がなされたことで、今後の水道ビジネスに影響が及ぶことは必至であろう。特に途上国での水道ビジネスでは、料金徴収におけるリスクが大きいが、“安全な飲料水を手にする権利”が人権であれば、料金が支払われないからといって水供給を止めてしまえば、それは“人権侵害”となる可能性があり、今後、民営水道事業が今まで以上に監視を受けることは間違いない。日本企業が海外で水道事業を運営する上でも、リスクコントロールが今まで以上に重要になってくるだろう。