米メーン州バンゴアのメーン大学高齢化研究センターが2010年5月18日に公表した報告書によると、環境保護庁(EPA)の補助金によりメーン州で実施されている「メーン州医薬品安全処分」プログラム(Safe Medicine Disposal for Maine program)の成果として、1トン近くの不要医薬品が上水道や埋立処分場に紛れ込むのが防がれたという。
これは、EPAの高齢者イニシアティヴが15万ドル(約1400万円)を拠出して2007年にはじめたプログラムで、消費者のもとにある不要な医薬品を郵送してもらって安全に処分しようという試みである。このプログラムは2009年に議会により延長が認められ、さらに15万ドルの予算が割り当てられた。メーン大学高齢化研究センターの報告書は、このプログラムは「他の組織や州によって全米各地で実施するためのモデル」になりうるものだと述べている。
医薬品は、水道水の汚染物質として最近特に注目されているもののひとつである。EPAは、医薬品など、水道水中の汚染物質を定量的に把握するために、上水道ユーティリティの調査を計画している。
メーン州のプログラムでは当初、4つの郡の11の薬局が、不要な処方薬や売薬を一般家庭から郵送してもらうための封筒の配布拠点となった。その後、2年間のうちに、これはメーン州内各地の150の薬局や保健社会福祉事務所にひろがり、封筒配布の対象も65歳以上から全人口に拡大された。郵送された不要医薬品はメーン州薬物取締局がまとめて高熱焼却により処分している。これは、違法なドラッグを押収した場合の方法と同じである。
メーン大学高齢化研究センターのまとめによると、これまでに9400の封筒が配布され、そのうち42%にあたる3926通がもどってきた。それによって返送された医薬品は2373ポンドで、その83%にあたる1970ポンドは、このプログラムがなければ、環境を害する仕方で捨てられていたと考えられる。プログラムに参加したひとの半数近い46%が、不要な医薬品をトイレに流していただろうとし、また、37%が、ゴミとして出していただろうとしている。
郵送されて戻ってきた医薬品は、平均の卸売価格でいうと合計約57万3000ドル(約5220万円)で、その大半は錠剤だったが、液状薬、ゲル状薬、軟膏、膏薬が合わせて14%あった。なかには、ごくわずかではあったが、モルヒネ・ポンプなどの薬以外の医療用品もあった。
なお、EPAは、メーン州のこの試みのほかに、ミズーリ州セントルイスの不要医薬品テイクバック・プログラムにも補助金を出している。