インドではもちろん、南アジアでも最大の淡水化プラントが、2010年7月31日、稼動開始した。タミルナドゥ州の州都チェンナイから約35km北に位置するMinjurに設置された同プラントは、ベンガル湾の海水を1日に2億4000万リットル取水、逆浸透膜(RO膜)によって淡水化し、日量1億リットルの浄水をチェンナイ市民に供給する。総工費60億ルピー(約110億円)をかけて建設された同プラントは、200万人の水需要を満たすことができる。
チェンナイ市民は、これまで数十年に渡って、水不足に悩まされてきた。同市およびその周辺地域の需要を満たすためには、工業用水や商業用水も含めると、1日14億7000万リットルの浄水が必要である。しかし、これまでは、水源がモンスーンや気候の影響を受ける湖沼や貯水池に限られ、1日の浄水供給量はわずか6億~6億5000万リットル程度であった。
このチェンナイに新設された淡水化プラントは、DBOOT(Design, Build, Own, Operate, Transfer)契約に基づき、IVRCL社(インドのエンジニアリング会社)とBefesa社(スペイン)の合弁会社“Chennai Water Desalination Ltd.”が建設した。同社は、チェンナイ市上下水道局(CMWSSB:Chennai Metropolitan Water Supply and Sewerage Board)から契約を受注し、今後25年間に渡って同プラントの運営を行なう。CMWSSBは、同社から1000リットルあたり48.74ルピー(約90円)、つまり約1米ドルで浄水を購入する。同社のNatarajan Ganesan氏は、「同プラントではエネルギー回収技術によって電力消費量を削減している。そのため、インド国内の状況をみても間違いなく競争力の高い価格で浄水を供給できる」と語っている。
同タミルナドゥ州では、上述の同国最大の海水淡水化プラントと同規模のプラント建設プロジェクトが進行中であり、2012年の稼動開始が予定されている。このプラントを建設しているのは、VA Tech Wabag社である。
また、マハーラーシュトラ州の州都ムンバイでも、淡水化プロジェクトが計画されている。ムンバイ都市圏開発公社(MMRDA)は淡水化プラントを3つ建設することを決定しており、同公社のRatnakar Gaikwad氏によると、淡水化プロジェクトのフィージビリティ調査を近日中にコンサルタントに委託するという。プロジェクトは、官民連携(PPP)によって行われる予定である。Gaikwad氏は、「チェンナイの淡水化プラントはPPPを利用して行われ、その造水量は日量1億リットルである。しかし、ムンバイは、日量5億リットル造水を目指している」と語っている。