ロシア政府は2011年に、飲料水の水質向上と汚水処理の整備を目的とした「きれいな水」プログラムを開始する。これに向けて年間5億ユーロの資金をむこう3年分用意することになっている。
同国では年間180億立方メートルの汚水が発生している。公式発表によると、そのうち80%が浄化処理されているものの、浄化基準を満たしているのはわずか10%であるという。国民の健康促進にあたって、飲料水の質と排水処理の改善が急務となっている。このためには、PPP方式による民間企業の活用が不可欠と見られている。現在のところ、ロシアの水市場はいまだ国営企業中心の編成となっており、国営企業からの水供給を受けている国民の割合は84%に達している。
現在、ロシアの水市場で活躍する3大民間企業は、①Roswodokanal社(Alfaグループ、マーケットシェア5%)、②Rossijskie Kommunalnye sistemy(Renovaグループ、同3%)、③Ewrasijski(Wneschekonom銀行、同3%)。また、特に水テクノロジー分野では、ロシアは外国企業の製品に依存している。その一例が、最近、フランスのDegremont社が受注した、ロストフ・ナ・ドヌならびにソチにおける下水スラッジ焼却処理施設の建設事業である。ロストフ・ナ・ドヌは、ロシア水経済の近代化に向けた試験地域のひとつに指定されており、国家投資基金から多くの資金を提供されている。今年1年間だけでも、上下水道関連設備に50億ルーブル(約136億円)が投入されることになっている。
また、サンクトペテルブルグ市は2010年夏、「南部地域における飲料水供給に関わるエネルギー効率向上プログラム」を採択した。同プログラムは、飲料水供給に費やされる電力を3分の1以上削減することを目指すもので、向こう3年間の関連投資額は26億ルーブル(約71億円)にのぼる。プログラムの目玉は、水の採取、保存、分配に関わるデータ収集・分析だ。このほか34か所のポンプ場の近代化工事、下水スラッジを再利用したバイオガス活用などが予定されている。
Grobal Water Intelligenceの計算によると、ロシアにおける水の値段は、世界平均のわずか3分の1程度であるという。1立法メートルあたりの値段は、ロシアが0.6ドル、ベルリンでは6ドル、パリでは4ドル、ニューヨークでは2ドル強といった具合だ。しかし、ここ数年でロシアの水の値段は急上昇しており、2009年1年間で約33%もアップした。
事業者に対する河川等からの取水税も引き上げられる。現在、製造目的の場合、1,000立法メートル当たりの税額は、水源によって250~500ルーブル(約682円~1365円)の範囲となっているが、日刊紙Kommersantの報道によると、向こう3年以内にこれが約2倍になるという。これにより事業者は節水技術への投資を余儀なくされるであろう。ロシアの製造業では、パルプ1トンに約400立方メートル、スチール1トンに約250立方メートルの水が消費されており、これは西側先進工業国における消費量の2倍から5倍に相当する。