ここ数年、ポーランドでは上下水関連の設備投資が急速に進んでおり、これに伴って浄水場で発生する汚泥の量も増加している。2008年実績によると、国内で約100万トンの下水汚泥が発生したが、適正処理のために貯蔵(一時貯蔵も含め)されたのはそのうち約30%に過ぎない。一方、同国では2013年初頭以降、有機性汚泥の埋立処分場への搬入が法律で禁じられるほか、肥料としての再利用も基本的には禁止される(含有重金属濃度次第で例外的に認められるケースはある)。さらに近い将来、廃棄物の埋立処分費用の大幅値上げも予定されている。
こうした背景のもと、同国では汚泥処理技術に対する関心が急激に高まっている。EUの環境政策においても、汚泥の処理処分に関する管理強化の必要性が認識されつつある。
現在、ポーランドにおける下水汚泥の主要処理方法は、脱水ならびに熱処理である。EU新加盟国の中でも、こうした技術関連の設備投資が最も進んでいるのがポーランドだ。そして大規模事業はほとんど大都市に集中している。
脱水・熱処理以外の方法としては農業利用や家庭ごみとしての堆肥化処理などがあるが、これらは利用し尽くされているのが現状だ。こうした中、将来的に下水汚泥をセメント工業における代替燃料としての再利用することへの期待が高まっている。この方法は費用がかさむものの、火力発電所におけるコーファイアリング(co-firing)のように燃え滓を残すことなく、原料ならびに熱として100%再利用できるという利点がある。また、現在、ポーランド国内では8件の廃棄物焼却施設新設事業(全体で年間処理能力700万トン)が進められているが、これに関連して、廃棄物の焼却過程における下水汚泥のエネルギー利用への注目が高まる可能性がある。
一方、多くの専門家の間では、下水汚泥の代替燃料としての再利用は、EUの新廃棄物枠組み指令の基本方針と矛盾するとする見方が優勢だ。EU指令では、処理の優先順位として、「発生抑制」が第一に挙げられ、以降、「再使用」「再生利用」「熱回収」「適正処分」の順と定められており、これに従うと、ポーランドの取り組みは何よりも、国内全土を網羅する廃棄物の分別回収ならびにリサイクルのネットワーク構築に向けられなければならず、廃棄物のサーマル利用は副次的な役割にとどまるべきと見られるためである。