2011年6月に発表された新しい報告書で、世界的な大企業のほんの一部しか水不足に対処するための対応策を講じていないという結論が下されている。
この報告書は、環境・社会・ガバナンス(ESG)分野の独立系リサーチプロバイダであるEIRISが作成したものである。
この報告書A drought in your portfolio: are global companies responding to water scarcity?(貴社のポートフォリオのなかの干ばつ:世界的企業は水不足に対処しているか)の主な結論は、グローバル企業2000社のうち、54 %が水関係のリスクにさらされているが、0.22 %しかそのリスクに対処するための十分な管理体制、方針、報告の仕組みを持っていないということである。
この報告書は、石油・ガス、採鉱・金属、発電機、半導体工場、小売店チェーン、農業、林業・紙、食品飲料など、水への依存度が高く水関係のリスクにさらされる危険性が高い11種のセクターを取り上げて分析を行っている。
しかし、これらの企業の9.7 %しか水消費量に関する短期的または長期的な目標を設定していないし、同じく9.7 %しか水質に関する目標を設定していない。
この報告書は、何も手を打たず現状通りというシナリオのもとでは、2030年までに水の需要量は供給量を40 %超えると予測している。
EIRISの主任ウォーターアナリストでこの報告書の執筆者であるRandeep Sanghera氏は、「企業が安く簡単に水にアクセスできる時代は終わりになりつつある。このことは、ほかの天然資源を失うよりはるかに大きな脅威をビジネスにもたらす可能性があるのに、大多数の企業や投資家は、依然として自分たちが直面するリスクに気づいていない」と述べた。
いっぽうで、報告書では、一部の企業が対策を取る可能性があることも示されている。それによると、企業の36 %は水が対処しなければならない問題であると認識しており、22 %が水の消費量を監視していることを明らかにしている。
EIRISの報告書は、投資家は自分たちの企業の水に関するリスクを評価すべきであり、かつ水の管理を環境戦略の中核に据えるべきであると書かれている。
なお、上記報告書は以下のウェブサイトで閲覧できる。
http://www.eiris.org/files/research%20publications/EIRISWaterRiskReport2011.pdf