世界自然保護基金(WWF)フランス支部は2009年と2010年に国内における水道水とボトル入り飲料水の質に関する調査キャンペーンを実施し、2011年5月にその成果報告書『飲料水 水道水とボトル水の比較分析』を公表した。
WWFは、約50都市において浄水場ではなく一般の水道の蛇口から直接サンプルを採取し、保健省から資格認定を得た研究所で分析を行った。調査対象となったのは、芳香族有機物(HAP)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ビスフェノールA、有機塩素、農薬等の内分泌撹乱物質を含む約180種の化学物質である。調査結果は、水道水は総じて現行基準を満たしているというものであったが、硝酸塩、消毒の副産物である残留塩素あるいは残留臭素、アルミニウム等、19種の化学物質が検出され、サンプルの20%以上からHAPとアトラジンあるいはそのメタボライトが発見された。ボトル入り飲料水(ミネラルウォーター、複数の原水の混合水)についても、水道水と同様、化学物質含有量は現行基準値を下回っていたが、4種のミクロ汚染物質、すなわち硝酸塩、アルミニウム、アンチモンおよび鉛が検出された。
WWFは報告書の中で、飲料水中の化学物質が多種であること、また増加傾向にあることを問題視し、これらの内分泌撹乱物質が微量であっても長期にわたって曝露され続けるリスクについて警告している。WWFはまた、微量の化学物質が他の物質との相乗効果で人体に有害な影響を与える可能性(カクテル効果)を懸念している。WWFは、水処理は次第に困難かつ高コストになってきていることから、水道水とボトル水の別を問わず、飲料水の流通過程における先行部門、すなわち一般的には原水源を効果的に保護することが火急の課題であると主張している。