工業排水処理に係る主な問題としては以下のような問題がある。
(1) 工業排水の処理プロセスにおける複雑さ
下水道からの排水に含まれる汚染物質は単純で処理技術が簡単であるのとは状況が異なり工業排水はその成分が複雑である。その処理技術は特に複雑で、処理プロセスの選択に当たって考慮しなければならない事項が多い。この処理プロセスには、例えば汚染している工場の生産プロセスも含まれる。投資が不足し、排水を適切に処理できていない企業や、投資は足りているものの、管理が行き届いていないため排水が基準値を満たしておらず、所期の目的が実現されていない企業が一部存在する
(2) 工業排水処理の技術水準の限界
現状の技術水準では、国内の多くの工業排水の処理が基準を満たすことができない。たとえ検査の時だけは対応できたとしても、長期的に安定して運営することは不可能である。例えば製薬工場の排水、化学調味料工場の排水などは処理が難しく、今の技術水準が引き上げられるのを待たなければならない。
(3) 成熟な経済
排水処理が困難なだけでなく、経済的貢献は大きいが汚染も大きいという企業がいまだ存在している。例えば、製薬業界においては、中国の多くの製薬工場では薬剤を得るため自然素材の加工が行われるが、加工の際に廃棄物が多く生じ汚染が大きい。このようにして国内で加工された製品は、国外の製薬工場が購入し、それを更に化学的に加工して薬効を高めている。この際の汚染量は少なく、かつ、高い価値を生み出す。中国の製薬技術が未発達なために他国の「下働き」しかできず、付加価値が低く、環境汚染が大きい。
(4) インダストリアルパークの排水処理問題
インダストリアルパークは本来排水を集中的に処理するものである。しかし実際は容易に処理できる汚染物質を処理するに留まり、その結果排水処理場に到着した汚染物質の大部分が処理の困難なものとなってしまう。そのため、排水処理場の負荷が非常に高くなっており、汚染物削減ができない状況にある。
(5) 排水対策への資金投入に消極的な企業
一部の汚染排出企業は、排水対策への資金投入に消極的で真に効果的な対策がとられていない。
(6) 市場の混乱
排水対策を請け負う環境関係業者は玉石混交の状態にあり、その業界内に過当競争が生じており、排水に力を入れていた企業が何かの機会に他の分野に転じている。
(7) 規模の効果の問題
排水処理の発注は多くの場合規模が大きくなく、市の排水処理に比べ、規模の効果を発揮しにくい。優秀な業者でも、市の排水処理場のような大きな規模にするのは不可能に近い。
(8) ビジネスモデルの問題
環境業者のビジネスモデルの主なものは依然として「設計、調達、施工」であり、他のビジネスモデルは模索段階にある。
(9) ゼロエミッションの誤解
中国では排水のゼロエミッションを長年推進しているが、実際には、本当の意味でのゼロエミッションは難しく、完璧なゼロエミッションの事例は中国でも存在しない。誤解とは、多くの企業がこの問題で盲目的に設備を買い、技術を入れていることである。
(10) 排出標準の実現が難しく、管理も厳格でないという課題
一部業界で排出標準が実現されにくい主な原因として、その管理が厳格でなく、すべて一律の扱いで、実際に即していないことが挙げられる。工業排水処理業界においても同様の問題が存在する。