企業の水対策の開示率は向上するも、依然低調な全社的取り組み――CDPが報告書

世界の社会的責任投資家が主導しているカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)はこのほど、世界の企業の水問題に関する意識調査の結果をまとめた第2回の年次報告書を公表した。それによると、水問題への対策の戦略や計画に全社的な態勢で取り組んでいると回答した企業の割合はわずか57%で、これは気候変動への全社的な取り組みの割合94%と比べてきわめて低い。

この調査では、FTSE Global 500指数の対象となっている500社のうち、水ストレスの高い地域や業種で事業活動をおこなっている315社にアンケートがなされ、2011年の回答率は60%だった。これは2010年の50%よりも10%高く、このことをCDPは、企業の水管理に関する透明性の向上のあらわれだとしている。

アンケート調査のおもな集計結果:

上記の水対策への全社的取り組み以外の項目について、今回のアンケート調査のおもな集計結果を以下に示す。

  • 現在から2016年までのあいだに水の問題で事業への直接のリスクが生じると回答した企業は64%、サプライ・チェーンへのリスクが生じると回答した企業は66%。
  • 激しい気象現象や水不足で操業不能になるなど、水に関連した悪影響をすでに経験したと回答した企業は38%。
  • 水関連のリスクにさらされていると回答した企業は59%。事業に直接かかわるリスクとしては、水ストレスないしは水不足(41%)、洪水(24%)、風評被害(23%)、コンプライアンス費用の増大(21%)が挙げられている。
  • エネルギー企業は、リスクにさらされているという認識が72%と高いにもかかわらず、全社的取り組みは36%と全業種中最低である。
  • 63%の企業が水に関連したビジネス・チャンスがあると回答し、うち79%がそのチャンスは近い将来やってくると答えている。ここでいうチャンスには、水関連の新製品やサービスによる売上増のほか、節水によるコスト削減も含まれている。
  • 72%の企業が、水使用量と二酸化炭素排出量とのあいだに二律背反的な相関があると答えている。
  • 水に関して事業に直接かかわるリスクを認識していない企業がわずか7%しかないのに対し、サプライ・チェーンにリスクがあるかどうかを認識していない企業は38%に達している。
  • 一般消費財部門の企業はサプライ・チェーンのリスクに特にさらされやすいはずであるにもかかわらず、そのうちのわずか41%しか、サプライ・チェーンが水関連リスクにさらされているかどうかを答えることができなかった。