インドネシア海洋水産省、海水淡水化技術に熱い視線

インドネシア海洋水産省は、気候変動の影響によって到来が予想される水の危機に対処するため、海水淡水化技術の研究を進めてきた。

同省の調査によると、インドネシアには海水淡水化に適した場所がいくつもある。バリ州のNusa PenidaとGondol、西ヌサ・トゥンガラ州のLobom Strait、パプア州のビアク島、西ジャワ州のPelabuhan Ratu、その他いくつかの州の海岸地方である。

「海水から飲み水をつくることは、きれいな水の危機が将来予想されるなかで、戦略的に重要なステップである」Fadel Muhammad海洋水産大臣は、バリ州での淡水化事業の創設を8月29日の週に申請したミネラル・ウォーターのメーカー、PT Omega Tirra Kyotoを訪問し、こう語った。

海洋水産省によると、海水淡水化事業をおこなう小規模な企業をつくるのに必要な投資額は、およそ150億ルピア(約1億4000万円)だという。同省はまた、ひとつの小規模な企業でできる範囲内での海水淡水化による造水能力を日量10トンないし15トンと見積もっている。この造水能力は、2隻の船を使って深海の水を汲み上げることにより、40トンないし60トンにまで高めることができる。この淡水化技術は、高品質の食塩の製造にも使うことができる。

インドネシアの水問題:

インドネシアは雨量が多く、地表水も地下水も豊富で、領土内に世界の淡水貯水量の6%、アジア太平洋地域の淡水貯水量の21%がある。反面、治水は長年の課題で、雨季には洪水、乾季には深刻な水不足に悩まされてきた。近年、ジャワ島、バリ島、ヌサ・トゥンガラなど多くの地域が、おもに乾季に水不足に見舞われてきた。公共事業省水資源総局は、インドネシアには灌漑用、水道用、および産業用を含めて毎秒1074立方メートルの水需要があると報告している。

環境省が明らかにしたところによると、インドネシアの淡水のおもな水源である河川や湖沼の水質が、一般廃棄物や産業廃棄物によって重度に汚染されつづけているという。同省はまた、気候変動枠組条約事務局に提出した第2回国別報告書のなかで、インドネシアの水資源の減少は、集水域における重度の森林劣化と、ジャカルタなどで地下水の塩水化や地盤沈下が増大したことによるところが大きいと述べている。

人口が急速に増加をつづけ、経済が急成長していくなかで、水の危機はさらに悪化していくと予想されている。国連国際防災戦略(UNISDR)は2011年の報告書のなかの、旱魃に見舞われやすい国のランキングで、インドネシアを184ヵ国中36番目に位置づけており、202万9350人が危険にさらされているとしている。

ジャカルタのアンチョール・ドリームランドで2010年から淡水化プロジェクト:

ジャカルタのテーマパーク、アンチョール・ドリームランドでは、逆浸透による淡水化のプロジェクトが2010年にはじまっている。572万ドル(約4億4400万円)をかけたこのプロジェクトは、現在、日量5000立方メートルの海水を淡水化しており、将来は処理能力を日量1万立方メートルまで増やすことができる。

淡水化された水はテーマパークで使われ、それによって地元の水道会社PT Aetra Air Jakartaへの依存度が弱まるが、テーマパークで必要な水は1日に1万2000立方メートルで、7000立方メートルは水道会社からの水に頼らざるを得ない。

このプロジェクトは当初、反対の声も多かったが、ジャカルタ首都特別州のFauzi Bowo知事の支持を得て開始されたものである。

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