Veolia、大量輸送事業から撤退――50億ユーロの資産を売却して負債を圧縮

世界最大の水道ユーティリティであるVeolia Environmentは、2011年12月6日の年次株主総会で経営方針の転換計画を公表し、そのなかで、Transdevの名で知られる大量輸送事業から撤退して水、廃棄物、およびエネルギーの分野に集中するとともに、総額50億ユーロ(約5200億円)の資産の売却などにより、負債を圧縮することを明らかにした。Veoliaはすでにアメリカにおける固形廃棄物事業を売却しており、今後、イギリスの水道事業資産を売却する予定になっている。株主総会ではまた、配当の引き下げが提案された。

この資産売却についてVeolia EnvironmentのAntoine Frerot CEOは、「これはわが社の抜本的改革の原動力となるものであり、わたしはこれを2年間で成し遂げるという目標を自分に課している」と述べた。

これまで、Veoliaは2度にわたって利益予想を下方修正し、その後、2011年11月にはFitch RatingsがVeoliaの信用格付けを引き下げた。Fitchは、「軟調気味」の経済が、2009年に自動車メーカーや鉄鋼メーカーが景気後退を乗り切るために工場を閉鎖したときと同様の需要の急落をVeoliaにふたたびもたらし、廃棄物部門に痛手をあたえるおそれがあるとしている。

パリのKBL Richelieuのアナリスト、Chicuang Dangは、Veoliaの経営方針転換の動きについてこう述べている。「今回公表された計画はある程度まで信用回復に役立つだろうが、市場が求めているのは、それが実行されるという確かな証拠を目の当たりにすることだ。コスト削減と資産売却の効果はすぐにあらわれるものではなく、道のりは長い。だが、これがVeoliaのラストチャンスだ」

株主総会の日、Veoliaの株価はパリ市場で4.5%値上がりしたのちに利益確定売りが出て、現地時間の午後2時59分には0.7%安の9.455ユーロ(約986円)となった。Veoliaの株価は、この1年で57%の急落をしたことになる。

事業地域の縮小:

今回公表された資産売却額は、以前に囁かれていた30億ユーロ(約3100億円)という「予想を上回っている」と、Bryan, Gernier & Co.のパリ駐在アナリスト、Julien Desmaretzはいう。

Veoliaは、2013年末までに負債を120億ユーロ(約1兆2000億円)以下に圧縮するために、現在77ヵ国で展開している事業を約40ヵ国に縮小することにしている。2011年9月末現在のVeoliaの純金融負債は150億ユーロ(約1兆6000億円)だった。Veoliaは今後、中東欧、中国、およびフランスにおける事業、それに、イギリスの廃棄物事業、およびアメリカにおけるエネルギー・サービスに集中して取り組んでいくとしている。

また、Veoliaは配当の引き下げも提案している。Veoliaの配当は、2010年には1株あたり1.21ユーロ(約126円)だったが、これを2012年と2013年には70ユーロ・セント(約73円)にしようというのである。

さらにVeoliaはコスト削減の目標額を引き上げたほか、調整後営業利益が2010年の実績を下回ることを認めた。同社は、「この利益の低下は2011年9月までの9ヵ月間についてすでに報告した額と同程度になるだろう」としている。

コスト削減の効果:

株主総会でVeoliaは、コスト削減が営業利益にもたらす実質的効果は2012年が2000万ユーロ(約21億円)、2013年が1億2000万ユーロ(約120億円)、2014年が2億2000万ユーロ(約230億円)で、2015年には4億2000万ユーロ(約440億円)になるという見通しを示した。

Veoliaは、世界各地で1億人を超えるひとびとに水を供給し、およそ6300万トンの廃棄物を扱っている。

撤退が発表された大量輸送事業のTransdevは、2010年、Veoliaとフランス国有銀行のCaisse des Depots et Consignationsが両者の輸送部門を併合することで合意し、2011年3月に発足した会社である。これについてVeoliaのFrerot CEOは、Transdevは「われわれが将来もっと重要だと考える他の事業」と資金を取り合うことになるので、「輸送事業については新たな株主をさがす」と述べている。

いまが正念場:

Veoliaによれば、フランスの水ビジネスは、収益性の今後の低下懸念と、水処理事業を自治体に取られるかもしれないという脅威にさらされており、いっぽう、廃棄物事業は、ますます産業廃棄物に目を向けるようになりつつあるという。

Veoliaは、いまや株式時価総額の半分をうしなっている。利益目標を達成できないことを2011年7月に発表したのちには、債務不履行を避けるための保証コストは記録的な額に達した。

今回公表された事業内容の改革計画は、Frerot CEOの前任者、Henri Proglioがはじめた世界への拡張路線の終焉を意味している。Proglioは、2007年と2008年の2年間で企業買収におよそ40億ユーロ(約4200億円)を使い、Veoliaの事業地域をアルゼンチンから韓国にいたるまでの77ヵ国に拡大した。2009年にはVeoliaの会長職にとどまったままElectricite de France SAの会長兼CEOになり、2010年12月にVeoliaの会長を辞した。

Veoliaの現在の状況についてFrerot CEOは、「われわれはいま、困難な時期に備えた体制固めをしているところだ」と述べている。