国連の知的所有権に関する専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)が、工業技術の知的所有権に関する情報サービスを行っている英国のCambridgeIPが海水淡水化技術の分野の技術革新の状況について行った調査の結果を公表している(下記URL参照)。
http://www.wipo.int/patentscope/en/programs/patent_landscapes/documents/patent_landscapes/948-2E-WEB.pdf
この調査は、とくに再生可能エネルギーを利用した海水淡水化システムに焦点を絞って行ったもの。それによると、海水淡水化技術に関する対応特許(パテントファミリー)は全部で4551件あり、そのうち20パーセント以上が再生可能エネルギーを海水淡水化システムに組み込む技術に関するものだった。そして、そのうちの80パーセント以上が工場の廃熱や太陽熱や地熱などの再生可能エネルギーの熱を利用する技術だった。
「現在は海水淡水化システムに再生可能エネルギーの熱を組み込む動きがかなり活発になっている。なぜなら、工場廃熱、太陽熱、地熱など、利用可能な熱エネルギーが大量に存在するからだ。それが技術革新者たちにより多くの応用の可能性を考える動機を与え、多くの技術者たちが取り組むことで、市場へのルートも開けてきている」CambridgeIPのHelena van der Vegtはそう述べている。
この報告書の中では企業と製品のケーススタディも行われていて、コンテナを利用した太陽光発電と淡水化の統合システムの例(農村地帯や辺ぴなところにある工場には理想的なシステム)などが紹介されている。また、急速に成熟化が進んでいる波力発電の技術を組み込んだ野心的な統合システムの例も紹介されている。
「再生可能エネルギーと淡水化を組み合わせたシステムは、すでに送電線網から外れた辺ぴなところや島嶼部では現実になっている。各種の再生可能エネルギーのコストが低下し、新しい淡水化の技術が開発されてくると、この再生可能エネルギーと淡水化の技術を組み合わせたシステムが新しい時代の水利用の主流になると思われる。市場規模が拡大し、競争が激化すると、しっかりとしたIP戦略を持ち、この分野における特許の状況がよくわかっている企業のほうが成長の機会を生かす上で優位に立つのではないか」CambridgIPのCEO、Ilian Ilievもそう述べている。
また、この報告書は海水淡水化技術の開発競争の様相が変化していることも伝えている。昔から、この分野では日本のコングロマリットが開発競争をリードしていた。だが、現在は数多く登録されているパテントファミリーを見渡すと、ここ5年ほどの間に韓国や米国やドイツが日本に追いついてきているという。